テーマ:"あすの日本を考える"(493)
カテゴリ:雑学っぽいエロ
杜甫の『春望』っていう漢詩。 誰もが一度は目にしたことがあると思う。 これから冬を迎えるというのに、春を望むというのもどうかと思うけど、この漢詩が昔から好きなんだ。 国破山河在 国破れて山河あり 城春草木深 城春にして草木深し 感時花濺涙 時に感じては花にも涙をそそぎ 恨別鳥驚心 別れを恨んでは鳥にも心を驚かす 烽火連三月 烽火三月に連なり 家書抵万金 家書万金に抵(あた)る 白頭掻更短 白頭を掻けば更に短く 渾欲不勝簪 渾(すべ)て簪(しん)に勝(た)えざらんと欲す この詩の冒頭の国破れては、相手国のある戦争と思ってる人もいるかも知れなけど、実際は戦争に負けたことを嘆いてる訳じゃない。 「破」とは負けることではなくて、意味合いとしては体制が崩壊したという意味。 つまり詩は、国が内部崩壊した状態を憂いているんだ。 この詩の「国破れて」とは、755年、楊貴妃にうつつを抜かしていた玄宗皇帝に対して、臣下の武将 安禄山と史思明が起こした反乱「安史の乱」を指している。 いわゆるクーデターで荒れた唐の首都、長安の人の心と風景を後世に残そうと、杜甫が詩にしたためた。 『春望』を執筆した心情を汲み今風に訳すと、次のようになると思う・・・ 都は、内乱でボロボロになってしまったけど、山や川だけは何事もなかったみたいに昔のまんまだ。 城内にも春はやってきて、草や木が深々と茂ってる。 ふと、そんなことを思うと、花を見てもなんだか泣けてくるし、人との別れが哀しくてん、なんとなく鳥の声にも心がズキズキする。 もうかれこれ3ヶ月も戦火が続いているから、家族からの手紙なんてのは、万金にも値するほどの価値に思えるよ。 不安でたまんなくて白髪を掻けば、髪はさらに薄く短くなっちまって、今じゃ、カンザシすら挿せないよ。 歴史を紐解くと、かつて広大な地域を勢力下に治めた唐の都には、交易や交流で繁栄して世界中から色んな民族が集まり、人口も100万人を超える国際的大都市だった。 安史の乱は、多くの庶民を巻き添えにし、都はまたたく間に廃墟と化した。 クーデターの直後、安禄山が我が子の慶緒に殺され、危険を感じた史思明は一時的に唐側についた。 けれども暗殺を恐れて758年にふたたび乱を起こし、今度は自ら大聖燕王と称し、遂には安禄山の子慶緒を殺して皇帝を名乗った。 そんな史思明の権勢も長くは続かず、最後には自分の妾の子史朝義に殺された。 事態収拾のため、唐の宮廷は、その後、異民族のウイグル族に援助を要請して安史の乱は終息することとなるんだけど、結局これがきっかけとなって、唐は衰えてゆくんだ。 杜甫の『春望』は、激動の時代に翻弄された庶民の苦難を今に伝える。 戦争であれ、内戦であれ、政権争いであれ、政治や行政が乱れると、いつの世にも弱者が犠牲となる。 歴史は繰り返され、1000年以上経った今も、人の欲望や争い合う醜さは変わらない。 砂天狗の私生活はこのところ年中真冬。(笑) あぁ、たまには生温か~い春が欲しいなぁ... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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