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ないものねだり

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2011.08.10
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昨夜のお話の続き...


あれから、一ヵ月ほど経ってからのことだった...
砂と一緒に、あのカラスの群れを見た農家のおばちゃんが、突然家を出たきりになって、
そのまま戻らなくなったということだった。


ご主人が警察に届けて捜索願いを出し、尋ね人のポスターも家の周辺に貼られたらしいけど、
結局、消息は掴めなかったそうだ。


そのうち、母が農家に電話しても繋がらなくなり、心配して、何度かその農家を訪ねたそうで、
母が、何度目かに訪ねたときには、家の様子もおかしかったらしい。 
家には、人の気配というか、住んでるような感じがまったくしなかったそうなんだ。


母からの電話で、気になった砂は、翌週の休みに篠山の農家を訪ねてみることにした。 
この頃になると、丹波地方はすっかり冬になっていて、朝から凍てついた土曜日だった。
電話で母が話していた通り、門や塀の前は雑草が伸びて、人が住む佇まいじゃなかった。 
縁側に面した庭の庭木も手入れされず、ボサボサに伸びている有様だった。


家から、50メートルほどのところにバス停があり、向かいに古い木造の商店があった。
店には、新しい煙草の看板や、オロナミンCのブリキの看板やら酒の看板やらがあって、
表からでは何を売ってるか定かではないが、田舎にありがちなよろず屋のようだった。


砂は店に入って煙草を一つ買い求め、年配の主人に、あの家に何があったか聞いてみた。
聞いたところでは、おばちゃんが失踪してから、直ぐにご主人の様子もおかしくなったそうだ。


それから一ヶ月もしないうちに、ご主人は、あの裏山で首を吊った姿でみつかったそうだ。
葬儀らしい葬儀も営まれず、身内縁者だけで静かに済ませたらしい。


店で話を聞いてる最中に、近所のお年寄りが買い物にきて、途中から話に加わった。
お爺さんは、あの家とは随分親しく、互いに行き来があったらしかった。


実は、砂はそのお爺さんから聞いた話に、一番驚いたんだ...


お爺さんがいうには、あの家には跡継ぎになる者なんて誰もいないらしい。
身内といっても、近県に親戚が数人いるだけで、あの家の夫婦には息子も孫もないと。
あの家は、ずっと老夫婦だけの二人暮しだったそうなんだ... 


念のため、母に電話して確認してみたんだけど、答えはお爺さんの話と同じだった。


あの日、そういえば、おばちゃんに若夫婦のことなど一度も確かめていなかった。
砂は何の疑問もなく、盆休みに帰省した息子夫婦と孫だと、一人合点してたんだ。


だったら、あの家で砂が目にした若夫婦とその子供たちは、いったい誰だったのか?


今となっては、もう確かめる術もない...


民法第31条の規定では、失踪の結果、死亡とみなされる年月がある。「普通失踪」の場合、
行方不明となった年月日の翌日から起算して、法定の7年で期間満了という規定だ。
あの農家のおばさんの、普通失踪の満了日がつい先日だった。



今日は、各地で35℃を越える猛暑日になったね。 どぉ? 少しは涼しくなったかな?











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Last updated  2011.08.10 21:51:17
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