テーマ:詩&物語の或る風景(1048)
カテゴリ:砂的古典文学のススメ
椿の学名はCamellia japonica。 椿というと、ポトリと首から落ちることから縁起が悪いという人もいるけど、 そんなよくないイメージは、実はヨーロッパ人にもあるんだ。 文豪アレクサンドル・デュマの長編小説に『椿姫』というのがあった。 小説の方は知らなくても、オペラを観た人はいるかも知れない。 『椿姫』は、パリの高級娼婦が主人公という、当時では異色の小説として話題を呼んだ。 主人公のマルグリットは、胸に椿を飾って社交界に出入りし、その美貌から椿姫と呼ばれた... ある日、マルグリットは世間知らずで純情な青年アルマンと出逢って恋に落ち、 そして、汚れた娼婦の暮らしから抜け出そうと真剣に考えるようになる。 けれども、息子の将来と一族の名誉を案じた父親から「息子を思ってくれるなら、 身をひいて欲しい」と頼まれ、悩んだ末にアルマンを裏切ったフリをして遠ざけた。 一方、アルマンはマルグリットの心変わりを恨み、彼女を侮辱して旅に出てしまう。 そして、アルマンが事の真相を知って、急いでパリに戻ったけれど時すでに遅く、 マルグリットは既にこの世を去ってしまったあとだった... 1853年、デュマの長編小説のおもな幾つかのエピソードを散りばめて、 フランチェスコ・ピアーヴェが脚本を書き、ジュゼッペ・ヴェルディの作曲で、 あの美しい名作オペラが完成する。 オペラの原題は"堕落した女"を意味するLa traviata(ラ・トラヴィアータ)だけど、 日本では小説と同じく『椿姫』として人気が高い。 オペラ上演以降、"罪を犯す女"とか"お洒落な商売女"とか"落ちる女"とか、 ヨーロッパでも椿にはよいイメージを持たなくなったらしいし、 色の乏しい冬、目を楽しませてくれる艶やかな花ゆえの宿命だろうか... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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