カテゴリ:砂的博物誌
木五倍子(きぶし)は、冬の間も健気に枝先に細い花芽を垂れさせ、 寒さに耐えながら静かに、花咲く日の準備をして待ち続ける。 そして、肌寒さがまだ残る三月のはじめ頃、薄黄色の小花を膨らませる。 派手さはなく、目立つ花でもなく、早春の山の風景に溶け込むように咲く。 控えめで、品のある香りの木五倍子が好きで、砂はこの頃から山を歩く。 木五倍子は、キブシ科 キブシ属の落葉低木で、湿り気の多い土壌を好む。 学名では、Stachyurus praecox(スタキウルス・プラエコクス)という。 木五倍子は、山に早春を知らせる代表的な花だ。 その昔、既婚女性とか未婚でも十八才を過ぎれば歯を黒く染めた。 御歯黒というのは、貴族社会の言葉で「鉄漿」という字を当てることもある。 また、御歯黒のことを、御所では五倍子水(ふしみず)と表現していたそうだ。 庶民の間では、御歯黒のことを鉄漿付け(かねつけ)とかつけがねなどと呼び、 人妻や、十八才以上の未婚の年増女を歯黒女(はぐろめ)とも呼んだ。 御歯黒に使用される染料を、五倍子(ふし)という。 五倍子の原料は、白膠木(ぬるで)の木にできた虫瘤に含まれるタンニンだ。 けれども、五倍子は希少でとても高価な染料だった。 そこで、この木五倍子の実から採った染料を、五倍子の代用に使った。 つまり、木五倍子という和名はこうした御歯黒に由来する名前なんだ。 御歯黒の習慣が残っていた時代は、年増という言葉も生きていたようだ。 ちなみに、数え年で二十は年増、二十五で中年増、三十だと大年増と呼んだ。 砂が勝手にいってるんじゃない。書物にちゃんとそう書いてあるんだ。 なんか今日は、blogで敵を大勢つくってしまったような気がする...(汗) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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