カテゴリ:砂的博物誌
潮騒を聴きながら、この花を眺めていると癒される。 本来、6月から秋頃までが時期なんだけど、今年は異常に早い。 浜撫子(はまなでしこ)は、別名で藤撫子(ふじなでしこ)ともいう。 ナデシコ科 ナデシコ属の多年草で日本在来種の海浜性の撫子だ。 崖に生える場合、周囲に分散して生育しているけど、 砂浜では群落することが多い。 Dianthus japonicusと学名にも日本を示す"japonicus"を冠して、 おもに本州の太平洋沿岸から沖縄、中国沿岸部で見られる。 思えば、この花も探すのが困難になってきている。 近年、沿岸の護岸工事や砂防工事で生育する場所がなくなりつつある。 それでも、わずかな崖っぷちにしがみついて健気に咲いてくれる。 岩場に生える個体はもうしばらく安泰だろうけど、問題は砂浜だ。 群生する砂浜が少なくなってきて、追い詰められている。 減少の原因は、温暖化による海面上昇と、9.11から急に増えた堤防工事、 そして最大の原因は、やはり愛好家による無秩序な採取。 海浜植物は、海岸線から1km以内でしか生きられない。 浜撫子が砂浜に根を下ろし、群生するようになるには長い時間がかかる。 人にとって津波は脅威だけど、海浜性植物にとっては人の営みが脅威。 人の営みが、常に海辺の植物の生態系に深刻な影響を及ぼす。 丹後地域では絶滅、福島県では準絶滅危惧、島根県で絶滅危惧II類VUと、 砂にとっては、愛すべき植物に逢えなくなることが今一番の不安だ... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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