カテゴリ:砂的博物誌
鵺(ぬえ)退治で名高い源頼政には、武勇に似合わない恋話が残されている。 頼政は、鳥羽院に仕える菖蒲前(あやめのまえ)という美女に一目惚れし、 それが鳥羽院の耳に入って、院はちょっとした悪戯を思いついた。 鳥羽院は、菖蒲前とそっくりの女官に同じ着物を着せ、頼政に見分けるよう命じた。 頼政としては、思いを寄せる菖蒲前の手前、間違えることはできない。 そこで頼政は、面白がって答えを急かす鳥羽院に対しこの歌を詠んだ。 歌に感心した鳥羽院は、源頼政のために菖蒲前との仲をとりもったという。 「いずれが菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」という諺はこうして生まれた。 菖蒲と杜若が見分け難いように、物事の区別しがたい様子を表わし、 さらに、いずれ劣らぬ美しさを讃える意味にも使われる。 ところで、見分けが難しい菖蒲(あやめ)と杜若(かきつばた)。 そこへ、花菖蒲やアイリスなんかが加わるともう頭痛がしてくる。(笑) 端午の節句の菖蒲湯に用いるのは、サトイモ科の植物で、 蒲(がま)の穂のような花が咲く、まったく別の植物なんだ。 根に芳香があって、古くから邪気を祓うものとされ、 尚武(しょうぶ)や勝負にかけて、武士の縁起物とされた。 漢字だけだとしょうぶかあやめなのか皆目判らない。 どうも「菖蒲」という字が混乱の元凶だと思う。 菖蒲(あやめ)は、陸上の乾燥地を好み、草丈30~60cmほどで比較的小型。 葉は細長く平らで直立し、花は5月中旬~下旬に咲き、花弁の元に網模様がある。 花菖蒲(はなしょうぶ)は、半乾燥の土壌から湿地に生育して、 杜若に比べて乾燥地にも生育できる植生を持つ。 草丈は80~100cmで、葉の真ん中に隆起した太い葉脈を持つ。 花の色も多く、5月下旬~7月初旬にかけて大輪の花を咲かせ、 花弁の元にはっきりとした黄色の菱模様があるのが特徴。 杜若(かきつばた)は、この中では一番湿地を好んで生育する植生がある。 草丈はちょうど中間の50~70cmほどで、葉は長く花菖蒲に比べて幅広い。 花は中輪で、花弁の元には白または淡い黄色の細い模様が見られる。 ということで... うちの庭に咲いたのは花菖蒲(はなしょうぶ)ということになった。 ついでに、品種も調べると、江戸紫という品種の花菖蒲らしい。 こんな苦労をするなら、来年は杜若も菖蒲も話題にしないようにする。(笑) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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