カテゴリ:民話とあやかしの世界
小学六年生の夏、少しばかりゾッとした記憶がある... 砂の通った小学校は漁港を見下ろす高台にあって、 裏には鎮守の森があって、小さな神社があった。 砂と、貞清(さだきよ)と、国松(くにまつ)と、六右衛門(ろくえもん)と、 政子(まさこ)と、美沙(みさ)の6人は仲良しでよく一緒に遊んだ。 貞清は皆からサダ、国松は松っちゃん、政子はマコ、何故か六右衛門がロクベーで、 美沙だけは美沙のままだった。(笑) あれは、夏休みまであと20日あまりのちょうど今頃だったろうか、 仲良しだった友だち6人は、夕方から境内で"缶ケリ"をはじめた。 白熱したじゃんけんの末、鬼はサダに決まった。 みつかりたくなかった砂は、少し頭を使ってみた。 そして、砂はわざと鬼のサダが缶を置いた直ぐうしろの大きな楠に登って、 太枝に乗っかり、葉の茂みの間から鬼を見下ろす位置に就いた。 サダは、砂が自分の真上にいるなんてことは考えも及ばない様子で、 樹にもたれて、どうやって全員を見つけるかと作戦を練っているみたいだった。 全然、気づいていないのが面白く、笑いをこらえるのに必死だった... 上から見渡すと、神社の暗い回廊の床下に美沙が巧妙に隠れてるのが見えた。 一番最初に見つかったのは、要領の悪いロクベーだった。 ロクベーと、行動を共にするマコも近くでみつかったみたいだ。 二人を捕まえたことで、サダは缶を蹴られるのを警戒し、 缶からあまり遠くへ離れなくなった。 樹の上にいる砂は動きようがなかったし、 美沙も同じで、機会を窺いサダの動きを観察してるようだった... 膠着状態のまま時間が過ぎて、辺りが少し暗くなりはじめた。 暗くなった回廊の床下で、美沙はまだじっとしていた。 つづく... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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