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ないものねだり

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2012.07.08
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写真2.jpg

缶を気にしながら、サダは砂たちが焦って飛び出すのを待っていたけど、
相変らずサダには砂の所在は判らず、見当違いの方向を警戒していた。


サダの待ち伏せ作戦に引っかかって、アホの松っちゃんが早まって動いてみつかった。


砂から缶は近いけど、飛び降りてダッシュするにはサダが近過ぎた。
今は冷静に機会を窺うしかないし、もし蹴ることに失敗したら、
頼みの綱は、回廊の床下に隠れている俊足の美沙だった。


みつかったアホ三人が、砂のことを「帰ったんちゃうか?」とか、
「ビビってるんちゃうか?」とかいいだすからムカついた。


辺りは、さっきより随分暗くなってきていたから、
美沙がに食われてないかと、ちょっと気になりもした。


美沙の方に目を向けたとき、美沙の後ろに誰かが見えた。
白い半袖のシャツを着た同年代の男の子だったけど、この辺で見ない子だった。
床下の奥から出てきたので、気味悪く感じた。


男の子は、美沙の背中の直ぐ後ろにしゃがんで美沙の両肩に手を置いた。
見ない子だけど、美沙は驚きもしないし、きっと友だちなんだとその時は思って、
砂は、鬼のサダの動きに集中した。


サダが少し缶から離れ、砂が隠れた樹と反対の方へ動いた。
今だと思って、樹から飛び降り猛ダッシュしたけど、バランスを崩して転んだ。
サダは余裕で缶に戻り、ニヤニヤしながら缶を踏んで砂の名を呼んだ。


マコと、ロクベーと松っちゃんの、シラ~っとした視線が痛かった。
あとは、美沙が蹴ってくれることに期待するしかないけど、
まだ動きはなく、境内は一段と暗くなってきていた。


写真3.jpg
「どないしよ?」と、鬼のサダがいった。
「うん... 美沙呼んでやめて帰ろかぁ?」とマコが勝手なことをいい出した。


そのとき、タタタっと足音がして缶が勢いよく跳ねて藪まで吹っ飛んだ。
だけど... 缶を蹴ったのは美沙じゃなかったんだ。


足音は、缶が飛んだ方向へ駆け去って、そのままガサガサと藪を踏み分ける音がした。


その場にいたサダも、砂も、マコも、ロクベーも凍りついた。
サダは、真っ黒な影だったといい、ロクベーは物音だけだったといい、
マコは唖然として突っ立ったまま泣きそうな顔をしていた。


突然のことだったし、何事が起きたのか理解できていなかったけど、
あれが美沙ではないことだけは、誰もがよく判っていた。
だから、砂は白い半袖の男の子だったとは口に出せなかった...


「美沙は? 探さないと!」 みんなを連れて回廊の床下の方へ急いだ。


砂とサダが、回廊の床下に潜って美沙を引き出した。
眠ってるのか... 動かないし、返事もしないから怖かった。
逃げ出したいほど、ほんとは怖かった。


「蚊に血吸われすぎて死ぬんちゃうん?」と松っちゃんが心配そうにいうので、
砂は「蚊で死ぬかい!アホ!」と返した。


とにかく、ぐったりした美沙を交代でおんぶして家まで連れ帰った。


つづく...







  






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Last updated  2012.07.09 02:06:47
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