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カテゴリ:砂的古典文学のススメ
椿は、祖父がとくに好んだ花だった。 ※写真をクリックすると大きくなります。
祖父は、艶やかな園芸種を好んで植えた。 私はというと、野生の藪椿が好きだ。 戦後、祖父はどんな思いで椿の花を眺めただろう。 昭和43年に他界するまで、一度も絵筆を握らなかった。 そんな、祖父が残した恩賜の短剣が私の宝物だ。 椿は、山茶花と似てはいるが散り際が異なる。 花びらが、一枚ずつはらはら散る山茶花に対し、 椿は色褪せぬままポトリと落ちる。 武家などは、首が落ちるのを連想して嫌ったというが、 一方で、その散り際の見事さを讃えたともいわれる。 赤い藪椿を見ると、デュマの小説「椿姫」を連想する。 美貌の高娼マルグリットは、月のうち二十五日は白椿を、 五日間は赤椿を身につけ、社交界で椿姫と呼ばれたという。 マルグリットはある日、純真なアルマンと出逢い恋に落ちた。 そして、汚れた暮らしから抜けようと考えるようになった。 しかし、息子の将来と家の名誉を案じたアルマンの父からは、 マグリットは「息子を思うなら身をひいて欲しい」と懇願される。 マグリットは悩んだ果てに、アルマンを冷たく遠ざけたが、 アルマンは、マルグリットの真心を知らず、罵倒して旅に出る。 アルマンが、旅先で事の真相を知って戻ったとき、 既にマルグリットはこの世を去っていたのだ... 小説は、1852年に戯曲化され、舞台で成功を収めた。 Storyは戯曲と同じだが、ベルディ作曲による歌劇では、 二人の名前が、ヴィオレッタとアルフレッドに変わり、 1853年の初演は、配役の失敗と歌の練習不足で不評だったという。 椿姫から、椿はパリで罪な女や商売女を指す隠語ともなる。 1985年、私は赴任先のミラノで椿姫を観たとき、 祖父の顔と、祇園の八千乃という芸妓を想い出した... お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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