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2008年08月28日
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カテゴリ:雑感日記

星なりたい私になれる日記帳星

この文章はフィクションを交えたものです…
久しぶりに書いてみました





今年のお盆休みは長い事実家にお世話になった。
と、言うのも結婚前に使っていた自分の部屋の掃除して欲しい、と両親から言われていたせいだからである。何を捨てていいのか、いけないのか判断出来ないから、との事であった。

私の結婚はいわゆる「デキ婚」で、結婚の時の慌ただしさと言ったら、それはもう言葉では言い表せないくらいだった。

本当は結婚前にいろいろ整理したいことがあった。趣味だったカメラを持って、住み慣れたこの街を当時の私の視点でおさめておきたかった。

信頼できる友達や仲間と過ごした楽しかった時間、両親への感謝の気持ち、苦しくて惨めだった過去の恋愛…。

何か自分なりに形にして整理して実家を出たかった。

そんな思いとは裏腹に、私のお腹はみるみる膨らんでいき、周りの人達に気遣われて過ごした。結局最後まで私は周りの人達に支えられていた。

子供が産まれたら産まれたで育児に追われ、少し手が離れると仕事に出た。仕事に出れば、日々の暮らしに追われ、毎日少し気を緩めたら溺れてしまいそうな思いをしながら必死で頑張ってきている。

けれど、ずっと実家の部屋の事は気にかけていた。お盆とお正月に帰るたびに埃で汚れていく部屋を見ると、過去が深く暗い深海に沈んでしまっているような悲しさを覚えた。

だから今年のお盆は夏休みに有給も付けて少し長めに取る事にしたのだ。

埃まみれの部屋に入ると鼻の奥がむず痒く、くしゃみが数回連続して出た。木造で涼しい造りになっている割には閉め切った二階の部屋に入ると全身の毛穴から汗があふれ出た。

さて、どこから手をつけようか。

自宅のアパートでは狭くて収納できない為、持って来た妊婦服や赤ちゃんの肌着がクローゼットの中にギュウギュウ詰めになっていて引き出しからその端切れが顔を覗かせている。

独身の頃に時々買っていたVOGEやELLEと言ったファッション誌の山。

仕事で使う専門書、結婚の時に何冊か買ったゼクシィ、友達からの手紙や年賀状。

ダイビングで使ったピンクのマウスピース。

棚の奥には昔の写真。

写真で一旦手を止めた。封筒の中に束になって入っている写真を一枚ずつ捲って行く。短大の頃の私、入社した当時の私、最後のほうに高校時代の私。

懐かしさが込み上げて来る。

昔インテリア用に買ったYASHICAの埃を払う。相当古いカメラだがまだ使用できる為フィルムを入れた覚えがある。残り6枚になったまま、あの時から取り残されていた。

私は空に向かってシャッターを押した。カチッと懐かしい音が響いた。

途中で指が届かなくなって止めてしまったアコギのMORRISを抱えて少しだけ弾いてみる。棚の上にはjupiterのアルトサックス。ケースは誇りまみれだったが開けてみるとまだピカピカしていた。SELMERが欲しかったけど、習い事は続かない性格と分かってきていた時だったので中古のjupiterを買った事を思い出して、何だかそんな自分に笑えてきた。

私の部屋は、探れば探るほど懐かしさを帯びていった。懐かしいのに何故か新鮮だった。

過去を探る嗅覚が、あるものを見つけた。それは本棚の後ろの隙間から見つかった。

しっかりとした作りの日記帳3冊。

「こんなところに…」

見覚えのある表紙にそっと手を添えた。

その中に書かれている内容がじわじわとフライパンの上でバターが溶けるように思い出されていく。そしてページをめくる前に涙ぐんでしまった。

それは、今の主人と出会う前の事。辛くて苦しくて、惨めで、でも輝いていた恋愛だった。

忙しさからなのか、本当は忘れたいと思っていたからなのか、ただ単に人間の生理的な現象なのか、今では思い出す事も無くなっていた。

私は一瞬ページをめくるのを躊躇った。

「今更想い起こしたところで…」

そう思った瞬間下から

「おかぁさん、おかぁさ~ん。ごはんだよ~!」

と、4歳になる息子の呼ぶ声がした。

私は日記を誰かの目に触れないように箱に入れ返事をしながら下に降りていった。





長くなったのでつづく(笑)







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最終更新日  2008年08月29日 13時03分35秒
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