ハルさんちの母親卒業宣言
下田治美著・新潮文庫 わが子♂が2,3歳のころよく人から言われたのが「今が一番いいころよー」「中学校入ったら口もきかなくなるよ」。人によってはもう小学校にあがったらダメという。母親より友達!「全然相手にしてくれなくなるよ」。いっぱい脅されました。でも、あらゆる人から言われるので実際そうなのでしょう。 男の子は違う性別なので、ほんと、少年→青年になったらどう対処していいか、きっとわからなくなるに違いない、と今から気をもんでたりします。で、自然目がいくのが男の子をもつ母親の本。 本書はもう高校生になった子どもをもつ「母子家庭」の著者=ハルさんのエッセイ。やはりハルさんちでも息子は反抗期。母親を呼称で呼ぶこともなくなったらしい。小さいころはハルさんが温泉に行きたいけど、お金がないと嘆いているとき、我が家を温泉に見立てて自分は番頭さんになり、母親をゆっくりさせてあげたという「ナイスボーイ」だったらしい。うーん。 ハルさんは息子が18歳になるにあたって自立させようとします。手切れ金300万円で自分で生活しろと。ハルさんは子どもを過剰な期待でがんじがらめにすることはありません。自分がこの程度だったからといって子どもの出来についてはあきらめてる。遅刻ばかりする息子に「大学卒業くらいで簡単に幸せになられちゃ困るし、高校中退くらいで不幸になられても困るのよ」といって中退をすすめる。子どもに望むことは「自分がだれに食わしてもらってるか決して忘れない職業人になること」 あっぱれ。 そんな彼女は他人の子もほっとけない。親にガミガミいっている若い子やイジメをする子をみて、しかられてる親でもイジメられてる子でもなくその子自身を「かわいそう」と思う。そうなるには親にちゃんとしかってもらえなかったり、接してもらってこなかったからだと考える。「親は負けてはいけない。口にヨリをかけて闘かわなきゃ」最後の砦としての親、なんですね。子どもに迎合してもほったらかしてもダメなのだ。 一人暮らしをはじめるとき「ほんじゃ」といって出て行く息子にハルさんは「ほんとうに出て行きやがった。。わたしをおいて」とつぶやく。息子についていろいろいいながらも、愛情がにじみでています。本当はかわいくて仕方がないんだろうなあ。でも、息子のために、自分のために、上手に親離れ子離れをしなくてはならない。そう考えて18になった子を追い出したのでしょう。 本書は「上手な自立のさせ方」の教科書ではありますが、同時に更年期を迎えた女性がどう大変なのか、第二の人生をどう作っていくかについてもかかれています。更年期を乗り切るには「無礼になること」。何もかも頑張ってきて突然死したハルさんの友人の働く母の話は身につまされます。