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2010.04.04
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この頃、津本陽の『椿と花水木 万次郎の生涯』を読んでいます。読む時間もあまりないし、読むのが遅いので、ゆっくりと読んでいます。

坂本龍馬や勝海舟の影に隠れて、ジョン万次郎はあまり注目されませんが、波乱万丈の生涯を送ったすごい人物です。確か中学の頃の英語の教科書にも登場した人物です。

井伏鱒二、有明夏夫、童門冬二、松永義弘などもジョン万次郎の小説を書いている。ノンフィクションでも万次郎に関する文献はいろいろとある。

      ※      ※      ※

文政10年(1827年) - 土佐国中濱村(現在の高知県土佐清水市中浜)の貧しい漁師の次男に生まれた。死亡した父や病弱な母と兄に代わって幼い頃から働き、家族を養った。寺子屋に通う余裕が無かったため、読み書きも殆ど出来なかった。
天保12年(1841年) - 15歳の時に漁師の手伝いで漁に出て漁師仲間と共に嵐に遭難し、5日半の漂流後、奇跡的に太平洋に浮かぶ無人島の鳥島に漂着して143日間生活した。そこでアメリカの捕鯨船ジョン・ハウランド号に仲間と共に救助される。日本はその頃鎖国していたため、漂流者のうち年配の者達は寄港先のハワイで降ろされるが、船長のホイットフィールドに気に入られた万次郎は本人の希望からそのまま一緒に航海に出る。生まれて初めて世界地図を目にし、世界における日本の小ささに驚いた。この時、船名にちなみジョン・マン(John Mung)の愛称をアメリカ人からつけられた。
同年、アメリカ本土に渡った万次郎は、ホイットフィールド船長の養子となって一緒に暮らし、1843年にはオックスフォード学校や1844年にはバーレット・アカデミーで英語、数学、測量、航海術、造船技術などを学ぶ。彼は寝る間を惜しんで熱心に勉強し、首席となった。

      ※      ※      ※

上記はウィキに載っている万次郎の生い立ち、漂流と渡米の記ですが、その後、捕鯨船に乗り組み一等航海士にもなっている。日本の土佐に帰るため、日本人として最初にカリフォルニアの金鉱で働き、金を貯めて、ハワイ経由で昔の漁船仲間と一緒に日本に帰って来ている。

一人物の伝記風小説だが、波乱にとんでいて読んでいて面白い。しかし、今から100年ほど前とはいえあの時代、鎖国のアメリカに行ってまた日本に帰ってくるというのは並大抵のことではなかった。漁船が太平洋の鳥島に漂着して、助けを求めて島で生き延びていく生活もリアルに描写されていて、迫ってくるものがある。

日本人で始めてアメリカの近代捕鯨に参加しているが、荒くれ男どもを管理して、一等航海士、副船長までになっているのはすごい。現在の捕鯨と違い、当時の捕鯨はかなり危険で、何人も命を落としている。

当時アメリカは世界最大の捕鯨国で、7つの海に出向いて、年間800頭ほども捕獲していた。まさに乱獲である。マッコウクジラとセミ鯨のみだが。ランプの原料にする鯨油を採るためで、脂以外の身は海に投げ捨てていた。日本人からすると資源の無駄遣いである。時代は変わり、シーシェパードが日本の調査捕鯨を妨害する状況になっているが、西欧の自己中心的な論理であれもこれも語られたのではかなわない。

ジョン万次郎の物語には、話のネタになる事件が多い。経験した本人は大変だったろうが、話を聞く方は興味深い。

例えば、彼がアメリカの捕鯨船に乗って、日本の金華山沖まで来たとき(当時は金華山沖には大量のマッコウクジラが押し寄せてくる時があった)、日本人の漁師と出会い会話を交わすが、土佐弁と宮城弁が全然通じず、相手が日本人としかわからなかったというエピソードがある。せんでえ、せんでえ(仙台)ということばわかったらしい。江戸時代には、日本の標準語はなかったわけだし、よその地方の人たちと話す場合はかなり困難であったであろう。琉球にも万次郎は一度上陸しようとして、漁師と話したが、土佐弁と琉球語は全然通じず、相手が日本人かもどうかも核心がもてなかったようだ。

彼の後半の人生も明治維新にあたり、波乱万丈である。時間がないので、今日はこの辺で終わるが、今時のちょとした旅行記などよりもはるかに面白く、命をかけて生きた土佐人の意気込みが伝わってくる。






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Last updated  2010.04.04 22:21:50
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