如意宝珠を求めて、、、
全1108件 (1108件中 51-100件目)
< 1 2 3 4 5 6 7 ... 23 >
蔦とりの声が驚く崖下に老人はただ蹲っており
2014年10月11日
コメント(0)
木の実降る夜の森を彷徨いてサンダル揃え木の根に眠る
訪う人があれば周りがやっかむと施設の横で渡すクノール
蟷螂とみみずに会いけり畦道に立ち去り難し犬の綱引く
落ちたての丸々としたどんぐりを遊歩道遠く森に返しぬ
いくたびか椅子蹴りたしの思いあり蹴らずによかったなぜ蹴らなんだ
2014年09月13日
朝霧の和泉川土手軽やかに配達帰りの原付の過ぐ
2014年09月11日
早足の父を気にするふうもなく母は花野にえんぴつを舐む
変形性膝関節症いただいて若き女医に深々と礼す
老人の迷子知らせる有線のゆっくりと二度くりかえす夕
2014年09月07日
代々も母屋に住みしかまどうま藁打つ祖母のかたえ離れず
さみどりのセミへと羽化する一部始終見届けし子の首の蚊の跡
2014年08月09日
帰宅する娘の無言や部屋に入る犬の尻尾のとまどいて悲し
びりっけつに捧げる合唱「ガンバレー」ゴールと同時にぴたりと止みぬ
建売の居並ぶ新興住宅地旧の地主か桑の実の熟れ
盆休み西日まぶしきお地蔵に日日草が供えてあります
夜祭の妖怪メダルせがむ子に財布広げて見せやる嫁はん
ブランコの下はいつも水たまり梅雨の晴れ間の公園を過ぐ
2014年06月11日
仕舞湯を嫁にとられていつからか母ぴかぴかの新湯を浴みぬ
旗竿地買い手のつかずいぬふぐり小さき蒼の空の数々
手を曳いて行った神社のあざらけし狭い石段子の歩に合いて
高架下水道橋下緑陰下バイク乗りらの合羽に着替う
訪う先のドアストッパーいと汚しはたして足で処理していいやら
老いたれば赤子のようにだだこねてヘルパーさんのちちんぷいぷい
2014年05月11日
真夜中の春の森にはぱらぱらと小雨の如く種子の降るらむ
連休はいつ帰るんだの声も絶え犬に曳かれて花しべを往く
色あせた航空写真に今はなき実家の屋根と黒き人影
卒寿して鍛え直すや腹筋を文楽大夫の声の太さよ
2014年05月10日
ばたばたと音立て泳ぐ鯉のぼり父母の家は風の丘なり
人棲まぬ家においしき草あらむ犬ぐいぐいと吾をひっぱる
2014年04月12日
ようように買い手あらわる角の家のポストの目張りの剥がし跡かな
背伸びして下ろす両手の時間の差右手の記憶左手の記憶
いない子の靴干してあり庭の隅ぽつりぽつりと桜しべ降る
欠伸して立ち上がる犬に促されおんなおみなのではまたの声
カーナビの知らぬ飛び地をややこ背負う媼の指差す川向うかな
きたないといじめられし子のうつろなるさびしき笑い未だまつわる
2014年03月09日
春の日の障子に溜まる頃となりすかし紋様のさくらに張り替う
年老いて不如意なれば連絡は今後は子へとの追而書
家鍵を持たぬ老女の着膨れて冬の図書館ソファに目を閉づ
2014年02月12日
シベリアの凍土と子の言う日陰庭咲かぬを楽しむ紅い蕾よ
夜のなぜにさびしいんだろう成犬の顔低くして布団にもぐり来
子や孫の帰りし後の正月の雪の田んぼのどこまでも白く
2014年01月12日
池の底半眼で眠る亀のため薄氷を割るどんど焼の朝
老い犬となりせば昼も夜もなく鳴きやまぬ子をとんとんとあやす
薄雪や老樹の洞の木の仏今朝は蜜柑の供えてありき
花守となりたや春よ来ておくれ窓辺の椅子に着膨れて伯母
表札の墨のかすれや寒椿インターホンは押さずに戻る
丸まりて寝ている犬を揺り起こし散歩に連れ出す夜勤明けかな
2013年12月08日
右脚を引きずり歩く老人を走りて追い越す角曲がるまで
啄木は見たのであろう手のひらを独り身の義姉は手の甲を見る