浅田真央さんが銀メダル
空に太陽と月が一つずつしかないように、オリンピックにも金メダルと銀メダルが一つずつしかないのは、なぜだろう。ときに、もう一つ太陽があって夜を照らしてくれればいいのに、と思うことがある。そして今ほど、勝者の頬(ほほ)を照らす金色のメダルが二つあってもいいのに、と思うことはない▲バンクーバー冬季五輪・女子フィギュアで、韓国の金〓児(キム・ヨナ)さんが金メダルに、日本の浅田真央さんが銀メダルに輝いた。点差はあったが、共に自分らしい演技で観衆を魅了したという点では同等だった▲ライバルとして切磋琢磨(せっさたくま)しながら、ここまで来た。2人が努力を重ね、素晴らしい成長を遂げて五輪の舞台を迎えたことで初めて、歴史に残る名勝負が実現した。ヨナさんあっての真央さん、真央さんあってのヨナさんだ▲共に19歳。共に国民の期待を一身に背負い、想像を絶する重圧の中で、健気に、そして堂々と滑り、見事に力を出し切った。19歳のその精神力に感服する▲安藤美姫さんも5位、鈴木明子さんも8位の好成績で、日本人女子選手3人全員が入賞した。男子3人全員入賞と合わせ、日本フィギュア界の大快挙だ▲金も銀も、まばゆく輝いた瞬間は色の見分けが付かなくなる。真央さんの胸に輝くメダルは、真央さんのひたむきさを知る日本人には、まばゆい金色の光に包まれたメダルとして永遠に記憶されることだろう。(信)【編注】〓は妍の異体字, (2010年2月27日長崎新聞掲載)