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テーマ:恋愛について(2622)
カテゴリ:タコ生徒・学生期
高校3年の2学期のある日、私は全く同じクラスになったこともなければ話したこともない同学年の真理という学生に、「付き合って欲しい」と突然手紙を書いて友人に頼んで渡してもらった。後にも先にもこれ一回のことだった。屋上で話した。小柄で色黒、目が大きくてチャーミング、髪も長めの目立つ学生だった。どうして、あんな大胆なことができたのか、火事場のバカ力ともやや違うような気もするが、思い切ったものだ。今だったら、面と向かってガンガンと誘える臆面のなさが自慢ではあるが。
しかし、会ってすぐ手紙なんか出さなきゃよかったと感じてしまった。心弾むような気持ちがどこかに吹っ飛んでしまった。相手の仕草、表情、歩き方などで一瞬にしてその気持ちが読めてしまった。いつものパターンだ。案の定、良かったら付き合ってあげてもいい、みたいなことを言われて別れた。この屈辱感がたまらない、などと思った訳ではないがもうこの先はないと感じた。そして、実際に何も起こらなかった。 私には高校2年間、しつこく片思いしていた同級生のMがいた。しかし、Mには学生運動の闘士の彼氏がいて、私の思いは絶対に通じなかった。どうやっても壊れない壁に何度も頭を打ち続けているような生活から抜け出したかった。真理に手紙を書いたのも、そんな気持ちからだったのだろうか。 その手紙から一月くらいしたある日、学校からの帰りにMと二人で歩いて帰った日があった。学校は国立にあった。一橋大学のある大学通りは、両側の桜並木が名所となっているくらい素敵で広く、高校から中央線国立駅までは歩いて15分くらいかかる。だらだらと、Mと歩いていると反対側からあの真里が1人で歩いて来るではないか。ゆっくりとスローモーションのようにすれ違った。軽く挨拶はしたが、何も話さずに離れていった。後ろを振り返って真理の後を目で追うなってことはまったく必要ないと心が躍った。 「タコ君、真里さんにラブレター出したんだって?どうなの?あなたには、あんな感じの可愛い子が似合うよ。ああいう子が絶対いいよ。タコ君には可愛い子がいいよ。」Mは、2度そう繰り返した。彼女は、私が少なからず自分に思いを寄せていることを知っていた。私は、顔がかあっと熱くなって言葉に詰まった。どうして手紙を出したことを、彼女は知っていたのだろうか。Mは一生懸命私を突き放そうとしているようだった。 その晩のことだった。真理から初めて電話があった。やけに明るい元気な声だった。 「タコ君 ! 明日、会わない ?!」 毎回、果敢にこの緑の箱をクリックよろしくお願いいたします。 タコ社長の本業・オーストラリア留学 タコのツイッター Twitterブログパーツ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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