８月になると、市内のあちこちで慰霊祭が行われる。

終戦記念日が近いので、この時期は全国的にそうなのだろうが
広島は原爆記念日を前に、爆心地近くの施設では毎年の恒例行事である。

実家の母、カヤコさんは小学校で行われた原爆死没者の慰霊祭に参加した。
県北の寺に疎開していたため、被爆は免れたけれど
実家に残って暮らしていた母と弟二人（私からみて祖母と叔父にあたる）は
爆死したので未だに遺骨すら見つかっていない。

爆心地から１、２キロの距離にあった市内中区の小学校に
当時の在校生が集まった。
地元の新聞社も取材に来られ、一人ずつ話をしながら
会食も一緒にしたらしい。

亡くなった旧友もちらほらいるけど
残った旧友は定期的に集まり今も情報交換をしているそうだ。

家族を亡くして生き残った戦災孤児も戦争の被害者である。
想像を超える苦労をしてきたと思うが
お互い、その苦労があるからこそ分かち合えるものがあるのだろう。
取材の記者を交えてどんな話をしたんだろう。

「ね、ひとりずつ聞いちゃったもんね。全員じゃなくても
新聞には載るじゃろうね。」

「うんうん、ほうじゃね。」

「明日の朝刊は楽しみにしとこうね。」

女同士のふつうの会話で終わろうとしたときに
今度は別の記者の一人がカヤコさんにマイクを向けてきた。

（ありゃ？　この人はどっかでみたことある。
テレビで見たことあるわ。アナウンサーかね？）

（えーと、誰じゃったかいね。）

頭の中はボワンと余計なことを考えていたものの
マイクにむかって考えた言葉を選びながらしゃべる。

「あの、そうですね、・・・いろんなことがありましたけど・・・」

カヤコさん、どんなことしゃべったのかな。

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小学校で、解散後は旧友の一人の家におじゃまして
ゆっくりお茶して自宅に着いたらもう夕方。

猛暑の中、朝から出かけてたので
今日は早めに休もうかね。

お風呂につかって、夕飯を早めにとっていたときのこと。

ひとりごはんのカヤコさんは、テレビをつけていた。

夕方のテレビはローカルニュースを見るのが習慣である。

その、地元ニュースの、一画面。

（ありゃ！　ワタシじゃないね！）

※　カヤコさんは外出時は紫外線防止のためにサングラスを常時着用している。

いっぱいしゃべった新聞の取材よりも
多分編集されたらカットだと思ったテレビの方で
いきなり自分を見つけてびっくらこいたのだった。

そりゃ記念になりましたね。

ってか、誰も教えてもらってないから
一人もみてないよ。それ。

　　じゃ、しんぶんがカットされたとか？