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2005.09.03
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カテゴリ:北米青春記・昔話
アタクシの初恋は、天狗の申し子の様な人だった。亡き彼と同様、幼いころ武道の試合で出会った。

天狗の申し子S君の道場は遠い所にあり、彼等は初めてその試合に出場した。その道場の子達の型破りな強さに、アタクシ達も、先生方も、ド素人の付き添いの父母群も、みんな息を飲んだ。

特にS君が強かった。まだ十才なのに肩幅が広く、ガッチリした筋肉質な体格で、ちょっとジャガイモみたいな丸顔は絶えずニコニコしていた。

子供の武道の試合というのはなんだかゴチャゴチャしていて技がはっきり決まらなかったり、まだ始めたばっかりでヘタなのに相手もヘタなのでなかなか勝負がつかなかったりする。

だが、S君の目が覚める様な一本目が決まった時、アタクシはその一瞬で初めて恋をした。それほど鮮やかに決まった。ド素人の父母群もびっくりして声援がピタッと止み、審判も一瞬ポカンと呆気にとられていた。

その次の瞬間、父母達は「ホホーウ...!」と「まあ、子供のまぐれ当たりにしてはよくやった!」らしき感心の音をたてたが、アタクシはドキンドキンときめいていた。あれはまぐれなんかじゃない。確信した。

S君の次の技が奇麗に、また一瞬のうちに決まった時、会場はシーーンと静まりかえり、一秒おいて「ワーーッ」と歓声があがった。まるで漫画の主人公が一本目を決めた後の様な感じだ。

この時のことはなぜか一々鮮明な記憶がある。何度も思い返して美化してしまっているところもきっとあるが、その会場の匂い、隣に正座していた仲間の手のはがれかけたバンソコウ、全部ハイパーリアルに覚えている。

その試合ではS君がもちろん楽に圧勝、S君のハンサムな親友のM君が実力上二位だったはずなのにちょっとヘマをして三位、そしてなぜかアタクシがその二人の間の二位だった。三人トロフィーを持って並んでいる記念写真のアタクシのほっぺは真っ赤。自分の顔が(初めて)勝手に微笑しっぱなしでどうしても真顔になってくれなくて「アタクシの顔の筋肉、どうしちゃったのぉ?」と焦ったのを、今も覚えている。





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Last updated  2005.09.03 12:05:34
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