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本当に大切なこと

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たくさん、たくさん涙流したら、

瞳に映る辛い想い出もいっしょに流れ落ちるかな?

そしたら、きっと

満天に輝く夜空が、綺麗に見えるようになるかな?
2008年04月21日
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今日は、久しぶりに飲み会もなく早く帰宅して食事もお風呂も入りこうしてPCに向かっている。

書き込みたいことは山ほどあるのだけれど、これから書き込むことに対し、皆さんがどう受け取るのか、人それぞれなので僕はかまわないとも思っている。

それでは、これは僕が好きな作家の小説の中での文面を拝借させていただきました。

「こういう話があるの。作り話じゃないんだよ。ほんとうの話。ある島の話だけどね、その島に住む人って、みんな耳が聞こえなかったの」

「そんなの、おかしいよ」

「おかしくないんだな。その島は周囲から隔絶、隔絶ってわかる」

「わかんない」

「とても隔たっていること。文明から隔絶してる、なんて言うでしょ」

「うん」

「で、その島は先祖代々から島民だけで暮らしていたわけ。よその島からお嫁さんを貰うっていうようなことがなかったんだな。ところが島の中だけで結婚しているうちにね、先天性聴覚障害っていって生まれつき耳の聞こえない人ばかりになってしまったの 」

「わかった。耳の不自由な男の人と女の人が結婚するんでしょ」

「そう。だから島民のほとんどが耳の聞こえない人になってしまったの。それも、すごく大昔からね」

「どうするの。すっげー、困るじゃん」

「なんで、困るの」

「だって、耳が聞こえないと、確かしゃべれないんだよね」

「そう。喋れない。言葉を聞き取れないんだから喋れない。当然だよね」

「当然だよって、島の人が全員喋れないんじゃ、すっげー不便じゃない」

「喋れない人には、言葉はないわけ」

「喋れないんだから、ないでしょう」

「じゃあ、手話は」

夏美はぽんと手を打った。それから左右の手を使っていい加減な手話の真似をした。看護婦が微笑んで、手話でかえした。夏美のようなでたらめでなく、本式であるようだった。

「その島の人は長い間にすごく高度な手話を完成していたの。そして、その島で稀に生まれる耳の聞こえる人、つまり言葉を喋れる可能性のある人も、手話を使っていたわけ」

「みんな、耳が不自由だから、そっちのほうが正常みたいになっちゃたのね」

「そう、でも、夏美ちゃんは手話が口で喋る言葉に劣るって思ってない?」

「まあね、こうして喋ったほうが早いじゃない」

「ところが違うんだなあ。全然違うんだな。手話だけで愛を囁くこともできるよ」

「愛を囁く」

夏美は皮肉な眼差しを看護婦の顔にそそいだ。

「まあ、あたしには関係ないけどね。耳の聞こえない美男美女が手話で愛を囁くわけよ。それも言葉を喋れる人以上に熱く、甘く」

「・・・・・・ごめん」

「いいの。正直に言うと、あたし、愛を囁いたことも囁かれたこともないし」

「ごめんね」

「いいのよ。それよりも、手話が口で喋る言葉に表現力で劣るっていうのは、思い上がりっていうのかな。やっぱり思い込みにすぎないのよ。洗練された手話の表現力はすごいものなのよ。それだけじゃなくて」

「それだけじゃなくて」

「うん。島の人たちは漁業、魚をとって生きてきたわけ。それぞれが船に乗って、沖にでてお互いが離れていたら、言葉なんて海の風に掻き消されてまったく伝わらないじゃない。ところが手話なら離れていたって意思を伝えあうことができるの。手話に限らずサインよね。手の細かい動きが見えなくたって体全体の動きでお喋りができるのよ。手旗信号って知ってる」

「うん。旗もって赤あげない、白あげないで、赤あげる」

看護婦が失笑した。夏美は得意そうに笑いかえした。看護婦は笑いおさめて真顔になった。

「それはともかく、海の上ではいまだって手旗信号のほうが正確に意思を伝えられるんだよ。口で喋る言葉のほうが万能だなんて思い上がりなんだな。こういうふうに考えられないかしら。わたしと夏美ちゃんが喋っているのは、たまたま口がきけたから。そうでなければ、他の方法でちゃんと会話する」

夏美は看護婦の言葉を聞き流して、美醜について考えていた。まわりのみんなの顔が傷だらけであったら、夏美は特別な人でなくなる。

「ねえ、看護婦さん。みんなが美人だったら、美人なんて特別じゃないから、美人がいなくなっちゃうよね」

「そうね。もっともあたしはそれでもスタイルのいい美人のほうがいいけどね」

夏美は笑いかけ、あわてて笑いを呑みこんだ。上目遣いですまなそうに見つめる。

「気にしないで。ただ、口で喋るか、手で喋るかは、なんていうのかなあ。多数決で決まっちゃうんだよね。手で喋る島はマーザズ・ヴィンヤードって言うんだけど、地球には他にも結構そういう地域があるのよ。西インド諸島のグランド・ケイマン、スリナム。それからニューギニアのもあるらしいし、中米ニカラグアやヒマラヤ・・・・・。きりがないな。とにかく、さっきも言ったとうり口で喋るか、手で喋るかは多数決で決まっちゃうんだよね。多数決ってなんだろうね」

以上 花村 萬月 『風転』下巻より・・・・・・

僕はこの文章を読んだときにこの小説にでてくる夏美という女子高生と同じように考えていました。ただ、この文章を読み終えてからは偉そうのことを言うつもりはサラサラないけれど少しばかり物の見方が変わったことを思い出しました。






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最終更新日  2008年04月21日 22時58分34秒
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