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カテゴリ:与太話
とは言っても、大した事は書かないけれども。
アニメ化されて好評を博していると言うので、夏休みの帰省中に西尾維新「化物語」の原作、その上巻を読んだ。久しぶりのライトノベルだったので、それはもうウキウキしながら。 ――――しかし、「つまらない」。 いや、「つまらない」というのではあまりにも語弊がありすぎるので、「思ったほどじゃなかった」ぐらいにしておいた方が良いかも。 詳しい感想は読書メーターあたりを見て欲しいのだけれども、確かに面白くはあるのだが、どうにも続きを読みたいと思うだけのものが感じなかった。実際、「まよいマイマイ」の中盤辺りから読み進めるのが苦しかった。 どうも西尾維新の作品は読む人を選ぶらしく、俺は単に選ばれなかっただけかもしれないが、ともかくも、相当に期待外れだったのは否めなかったのである。あまりに期待外れだったので、読後から一時間ほどでブックオフに並んでもらった。 しかし、どうしてこうまで面白いと思えなかったのかと考えると、どうにも「化物語」という作品のストーリーの運びがあまりにもワンパターンに過ぎるからではないかと思ったのだ。 俺は上巻しか読んでないので下巻以降、どんな話になるのか知らないが、上巻の各話におけるストーリーの概略を簡単に記すと次のようになるはずである。 1.怪異発生(主人公、キーパーソンに遭遇)。 2.主人公、相手を助けようと決心。 3.忍野に相談。 4.解決。 というのが大体の流れではないかと思う。 だがよくよく考えてみれば、ストーリー上における似たような展開の繰り返しを以て「化物語」を批判するには足りないような気がするのも確かなのだ。そもそも世の中における物語は、ワンパターンが溢れている。毎回、印籠を取り出して騒動を鎮める「水戸黄門」などその典型ではないだろうか。 しかし、この傾向が最もよく現れているのが特撮ヒーロー番組ではないかと思われる。 2000年に放映されて好評を博し、主演だった某俳優にとっては黒歴史と化している「仮面ライダークウガ」を例にしてみたい。従来のヒーロー番組とは違う、リアル路線の新機軸を打ち出して成功した傑作だと思うのだが、実際に見てみると相当なワンパターン作品である。 1.怪人出現。 2.怪人が民間人を殺傷。 3.ライダー出動。 4.ライダー敗北。 5.警察と対策を協議。 6.怪人と再戦。 7.ライダー勝利。 この展開を、一エピソードにつき二話に分けてやるというパターンが多かったと記憶している。しかし、それでも「クウガ」はヒットしたし、実際に見てみるとかなり面白い。 思うに、世の物語におけるワンパターンが難なく受け入れられるのは、解りきった結末でありながらも、それによって確実なカタルシスが得られるからではないだろうか。仮面ライダーが必殺技で怪人を爆発させるのも、黄門様が印籠で事件を平和裏に解決するのも視聴者には解りきったことだけれど、だからこそ、その「瞬間」が訪れる事で確かな平穏の到来を実感できるのである。だから、ワンパターンさの甘受ということは、見る者の予測の範疇にぴたりと嵌め込まれた安定さの享受でもある。 すなわちワンパターンが許容され得る土壌というのは、それがある程度の「様式」と化しているのが最も成功し易いらしい。長きにわたって受け入れられたので、急に変える必要が無いほどに浸透しきっているからだ。 ここで話を「化物語」に戻したいのだが、どうも俺は大きな人気を獲得している作家というので、西尾維新童貞を卒業する事に過剰な期待を抱き過ぎていたようだ。実際、どんなに著名で評判の良い作家と言っても、作品群の中の駄作・愚作のリスクは常に付きまとう。「化物語」を駄作とまで言いきるつもりは無いが、そのワンパターンを俺が許容できなかったのは、まだ何も知らないまっさらの状態で「何が起こるのか」と期待し過ぎていたからかもしれない。その結果が、ワンパターンな展開の連続でガッカリしてしまったという訳。 けれども、それはあくまでストーリー上の概略だけで、細かな点やキャラクター自体の評価という点ではまた別の視点での見方があるはずである。 そして実は、展開のワンパターンさという骨格に対し、その他のポイントでいかに上手く肉付けを行って(言い方は悪いが)偽装していくか、見る者に悟らせないか……そうした部分もやはり、作品における「面白さ」を大きく左右しているはずである。 今回は、残念ながらふと気が付いてしまった。それだけの話だと思いたい。 そうでなければ受け入れられる物語の展開の幅を、読者自身の意思でいたずらに狭めてしまう事になるからだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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