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2011.05.19
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カテゴリ:拙文であそぼ
しん、という音が聞こえて目が覚めた。



ぼんやりと目覚めてから、「しん」という音を聞いたのではなく、

静寂の中で耳が「しん」という音を作ったのだと、気づいた。



しばらく「しん」という静寂を聞いた後、

キョウコはベッドから身を起こした。

喧騒の中で眠ることも難しいけれど、静寂の中で眠るのも難しい。

一体、何故こんなに静かになってしまったのだろう。



カーテンをそっと引きあけると、狭いベランダに光が溢れていた。

上階の角から差し込む月光が、ベランダに薄く積んだ雪の上で踊っている。

静寂の正体は、雪だ。



そういえば、朝の天気予報が雪を予告していたような気がする。

一日の終わりにみた予報は、明日まで関係ないと思っていたけれど、

こんな深夜にキョウコの目を覚まさせてしまう。



少しだけ、窓を開けてみると部屋の中へ冷気が滑り込んでくる。

冷えて尖った空気はなんて気持ちいいんだろう。

体の奥でくすぶっていた酔いまでも洗い流していく。



部屋の中では完全な静寂のように思えた街も、

窓を開けてしまえば、サラサラと雪の降る音に、風の音。

月光までもが、音をたてている。



突然、背後で震度音がした。

静寂の中で、マナーモードの携帯電話がテーブルを揺らしている。

意外な音の大きさに驚いたキョウコを尻目に、

僅かな点灯を残して、再び沈黙。



小窓にメール送信者の名前表示……ケイスケ。



ねえ、ケイスケ。

この景色を見てますか。

冷えた空気の中で、月光を浴びて静まり返ったこの街を。



ねえ、ケイスケ。

あなたの腕の中に、私を感じていますか。

私は、あなたを感じます。







*******

ずっと以前に受け取った「口説きバトン」。

いつかこれをお題にして、何かを書こうと思っていた。

まだまだ、精進が足りません。

書いていて、陳腐だと思う。

しばらく寝かせて、また推敲する。





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Last updated  2011.05.19 13:32:06
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