良い政治とは何か＆良い政治家とは

　12月16日、日刊雑誌の編集部記者から「岡田民主党について」コメントを求められた。
　記者の質問に下記のように答えた。

　・民主党は「ものわかりのよい野党」なのか・

　問　党首討論で小泉首相を追い詰めることができなかった岡田代表のどの辺が力量不足でダメなのでしょうか？

　伊 藤「小泉首相と比較してジャスコの次男坊で、東大、通産省と歩み、挫折を知らずに民主党のトップについたことが経験不足の弱点である。東大卒、官僚出身だからペーパーテストの成績が優秀な勉強家であるが、融通がきかない堅物であり、しかも国対など裏方の経験がないので政治家として清濁合わせ飲む腹がない。岡田氏の場合、政治の現場、権力闘争の修羅場をくぐってない分、政治的力量不足は否めず、同僚議員を含め他人の痛み、弱者の痛みが分かっていない。
　この点は菅直人前代表と違うが、同僚議員を含め他人の痛み、弱者の痛みが分かっていないという点では小泉首相と共通している」

　問　なぜ小泉首相を追い詰められなかったのですか？

　伊　藤「岡田氏が国会の場で小泉首相を追及する際、攻撃・追及の対象を絞らず間口を広げてしまい、あれもこれも追及しようとして、総花的な質問になり、結局、小泉首相のはぐらかし、開き直りを許してしまった。これは、そつなく、失点のない対応が身についた官僚出身政治家の悪い例で岡田氏の弱点である。
　先の国会では、民主党が小泉首相個人の政治団体と政策秘書（実姉）をめぐる後援企業者のタクシー会社からの高級車提供疑惑に的を絞れば、小泉首相を追い詰め、ダメージを与えることが出来たはずだ。ところが、民主党はこの疑惑を真正面から追及仕切れないばかりか、小泉首相の開き直りを問題だと審議を中断させるくらい迫力を欠いた。
　その一方で、江戸時代の岡っ引きさながら旧橋本派の１億円ヤミ献金問題などの追及に狂奔していた。この問題で、いくら小泉首相を追及したところで、小泉首相にとっては所詮、旧橋本派の問題でしかなく、痛くも痒くもない。国民の目には民主党の一部若手議員のパフォーマンスとしか映らなかったのではないか」

　問　次期通常国会では民主党が小泉首相を追い詰めることが可能でしょうか？

　伊　藤「今の民主党は、『何でも反対の野党ではない』ということをアピールしようとして、与党からすれば、『ものわかりの良い野党』になっている。これでは国会運営は与党ペースになる。野党は時に、与党に対しては『ものわかりの悪い野党』に徹し、与党を窮地に追い込む覚悟と捨て身の気迫が必要である。今の民主党にはそれがない。とても次期通常国会で小泉首相を追い詰めることは無理だろう」

　問　体たらくが指摘される岡田民主党を小沢一郎氏はどう見てるのでしょうか？

　伊　藤「小沢氏は歯がゆさを感じているのではないか。しかし、小沢氏は自らの出番に備えて、充電期間としているのではないか。若手を中心に、小沢待望論もあるからだ。しかし、それは長い間、小沢氏を見てきた中堅やベテラン議員ではない、あくまでも当選回数の少ない若手議員であり、最後のところで小沢氏から離れる可能性が高い」

　問　小沢氏が「こりゃダメだ」と民主党を離脱、政界再編という可能性もあるのでしょうか？

　伊　藤「それはあり得ない。旧自由党の議員ですら、すでに小沢氏から心が離れている議員が少なくない。民主党の若手数人を引き連れての新党はないだろう。なぜなら小沢氏は、少数政党の悲哀を味わい、自由党という少数政党に耐えきれず民主党と合併したからだ。小沢氏の側近や側から自民党に入る議員は居ても、自民党から小沢氏のもとに走る議員は皆無と見ていい」

　問　　前向きに考えて、どうすれば民主党は自民党を追い詰めることができるのでしょうか？

　伊藤　「仮に、野党・民主党が自民党を追い詰めることができる可能性としては、小泉首相の国会における言動、はぐらかし、公約違反のような発言、開き直り的発言に的を絞って、その責任を追及、国民に知らせることではないか」

　問　今のように「政治とカネ」の問題を引きずっていて効果はあるのでしょうか？

　伊　藤「民主党への効果は期待できない。『政治とカネ』の問題は、各党にわたるからです。特に橋本派の１億円ヤミ献金問題は司直の手に委ねるべきことであり、野党第１党の民主党が国会の場で、取り上げても民主党の支持層が増えるなど効果は期待できない」

　問　民主党がデモや集会などの活動をするとどの程度の影響力があるのでしょうか。

　伊　藤「確かに、いまどき、民主党がデモや集会など院外活動しても具体的影響力はさほどないかもしれない。しかし、時には『ものわかり悪い野党』になって、院外活動することで、『民主党も必死だな』という、その覚悟、気迫、空気を国民に伝える意味は大きい。真剣に政権交代を目指すなら、民主党も時には『バカ』にならないと、その真剣さが有権者に伝わらないからである。政治には覚悟と気迫が必要だ」