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カテゴリ:カタコト
目を覚ました時、空が広がっていた。
仰向けに横たわっているらしい。 理由は?…不明。 こういう時には冷静になって わかることをまとめてみよう。 名前は? ジェフティ、ジェフティ=ラインハルト。 年齢は? 確か二十歳。 職業は? …不明。 何故ここにいる? ……不明。 何をしていた? ………不明。 …記憶喪失か? ………。 自問自答終了。 俺の記憶が確かなら… 確かじゃないのは間違いないんだが。 確かなら記憶喪失の人間ってのは 自分では認識していないものなのではないのか? 記憶喪失を自覚しているというのは妙な感覚だ。 とりあえず体を起こす。 見たこともない光景だ。 煉瓦積みの家が建ち並んでいる。 壁に立てかけてある道具から推測するに、農業で生計を立てているようだ。 よくわからないがこの光景に違和感を覚えた。 何だ…? 黒い巨体が道を歩いているのだ。 牛が二足歩行に進化したらそんな感じになるだろう。 目もいい感じに血走っている。 上腕二頭筋もほれぼれするくらいだ。 そして どう見ても友好的には見えない。 俺はそれに気付かれないように立ち上がった。 自然と建物の影に身を隠す。 この感覚は…緊張? うまく表現できないのが苛立たしいが 現実離れしているその生物から敵意を感じるものの、 何というか。 そう。大して恐怖を覚えないのだ。 さらに言えば現実離れしているその生物も特に違和感は感じない。 現実離れしているのだが…いったいどの現実からだ? 背を預けている煉瓦の質感。その他もろもろ。 その全てがこれは現実だと告げている。 にも関わらず何となく現実感が喪失しているのだ。 記憶喪失だからか? 「燃えろ!」 自分以外の人間の声が響く。 と同時に今異形の生物がいるであろう場所に火球が飛んでいく。 魔法…? さっきから頭の中が疑問だらけだ。 俺は建物の影から出た。 自分の目で確認するしか情報が得られないからだ。 その牛野郎(仮名)は消し炭になっていた。 牛肉の焼けるいい匂いとはほど遠いタンパク質の焦げる臭い。 これは現実だ。 理性がそう叫んでいる。 「まだ人が残ってたのか!」 火球を放った何者かの声だ。 状況から見て俺に話しかけているのだろう。 「あ~悪い。俺には何がなんだかよくわからない」 「ふざけている場合か!早く逃げろ!」 「何から?どこに?」 「あの悪魔からに決まっているだろ!」 「だからどこに?」 「!」 痺れを切らせたらしいその青年は俺の襟首をつかみ 顔を正面からのぞき込んだ。 「ふざけるな!死にたいのか!」 「あ~悪いんだが。俺、記憶喪失のようなんだ。」 我ながら間の抜けた会話だと思う。 「………この状況で悪ふざけができるわけがないか」 「俺の近くにいろ!そして決して離れるな。生き残りたいならな」 「そうさせてもらうよ。何もわからないまま死にたくはないからね」 言いながら俺は素直に従う。 よく見ればその辺には黒く焼けた地面がちらほらある。 少なくともそれだけの数の牛野郎(仮名)を倒しているようだ。 建物の影から一匹、二匹と牛野郎(仮名)が姿を見せる。 見えるのとほぼ同時に火球が飛んでいき消し炭に変える。 どうやら牛(ryとこの青年の実力差はかなりあるようだ。 だが…。 だんだんと見えている牛野郎(仮名)の数が増えているように見える。 「その短剣は使えるのか?」 「俺か?」 「お前以外にいないだろ」 腰に目をやるとそこには見事なまでに短剣があった。 とりあえず抜き放つ。 「使えるみたいだな」 俺の構えを見てそう判断したらしい。 「やばいと思ったら独りで逃げろよ」 なんとも不安になることを言うやつだ。 続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.06.06 23:50:37
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