三年前の未だ残暑が残る秋口に
娘がいつもと違って生真面目な顔してお願いがあると言う
何だろうと思って話を聴いて申し訳なくなり即座に同意した


お父さんのふるさとに是非とも行きたいよ。
今まで、なかなかチャンスらしいものがなかったけれどどうかなァ？
ウーン！そういうことか。
九州は遠いいし両親もすでに亡いのに
東京育ちのお前たちには退屈だろうと勝手に思っていたおれが悪かったよ。
そんなことを思っていたとは気づかなかった。
すまないよし。いつが良いのだ。
仕事の都合はつくのか？
うん、９月頃はどうかな。
分かったよ。
直ぐ、お姉ちゃんたちに連絡するきっとびっくりするが、大歓迎は間違いないから安心しろ


というやり取りがありました。
今想えば、娘は結婚を決意していた彼氏が居たのだった
そんなことは露知らずではあったが・・・
結婚の前にルーツと言っては大げさだがいつもオヤジが話している九州に行ってみたい
親戚の人全部に会いたいというのが娘の気持ち
できれば、おばさんやいとこ達はどんな人なのか云々・・・
どんなところに住んで何を考えているのだろうかなどなど
思いは限りなく膨らんでいたようだ


最初に対面したのは私にとって最初の姪
博多で日舞の師匠をやっている
娘とは２０歳位の年の差があるが気風の良い姪だ
この姪とは阿吽の息が合うのだ
そんなこともあるのかどうか
何故か初対面から二人は意気投合した様子
その日、会社の出張のお客様や大学同窓との会合が長引き
かなり遅れて夕食に参加したら
既に、お互い「ちゃん」で呼び合ってほろ酔い加減でいるのだった
それに付き合っている旦那も真っ赤な顔色でろれつも回らない
いやー、よかったよかった
最初の姪でもあったし生まれた頃からずっと可愛がってきたので
何だかうれしくって涙が出そうになったほど


今回もその従姉妹のお師匠さんに再会するのが大きな楽しみらしい
ちゃっかり、今度も旦那も一緒にお宅に泊めてもらうらしい
今頃は二人で機内で大はしゃぎしていることだろう


その後がすごかった
すぐ上のお姉ちゃんがすっかり喜んでくれ
最初に泊まった夜は手作りの田舎料理のてんこ盛り
少食の娘に「東京の子は食べんねェー」と拍子抜けもあって呆れてしまった様子
翌日は姉の車で私（父の）のルーツ探しのドライブ
小中学校、上野峡谷、白糸の滝、上野焼の窯元めぐり
母の実家の後と近くのお宮などなど思いつくところをせっせと回った


夜には姉の三人息子の一家全員ともうひとりの父の実家を継いでいる姉を集合させ
ドライブインの焼肉屋でいとことその家族が全員参加のパーテイで大盛り上り
こんなくだけた肉親の集まりは久しぶりだった
娘はひとりひとりの名前と顔を確認しながら大忙し
ふるさとはいいものだ
その夜は父の実家に泊まり両親の遺影に食い入るように見入っていた
何だか吸い込まれそうだと娘が感想を述べていた
なかなか、両親の大きな遺影に圧倒されたのか寝つかれなかったようだ


想えばその頃は私も元気で焼肉食べ放題だったんだ
いやー懐かしいというのか三年で人は変わるものだ
もうあのご馳走には付き合えないよとほほほのほ！