カテゴリ:恋愛都市
あっけなく夜は明けて、その小さな硬いシングルベッドで、ふたりはまどろんでいる。
狭いBEDに背を向けて、こんなに体は近いのに、なにも伝わってこない。 息を潜めるようにして、地球が動き出すのを待っていた。 夜明け前まで彼は彼女の部屋で作業を続けていた。やがて化粧を取ったその素顔の彼女はシャワーを浴びた洗い髪のまま、彼の前に座った。 彼らはそういったおだやかな男と女の河の手前で、躊躇っていた、なにを。 ありきたりな学生時代の恋の、ありがちなそういった夜の関係を拒否して、それでもなお、ぎりぎりの譲歩を互いに感じながら、彼女の寝返りをうつ、そのときの黒髪の香りや、いっそ抱きしめてしまえば、すべてこわれそうな、その成熟した体の存在は、決して甘美なものとしてそこになく、彼には、その部外者、当事者を回避するような、立場で、その朝は来たのだった。 ひとつのキスはすべてを変えてしまったかもしれないのに。 こんなグレイな朝に、あの夜にキスをしていたら、どうなっていたのか、ふとそんなふうに思った。 彼女は授業を休むことなく、英語の勉強を始めた午前中に、彼女の父親が借りているという彼女のマンションを出ると、霧のような雨がしのついていた。 ふと携帯がなると、彼女はベランダで、手を振っていた。 3年になるとゼミにいそがしくなった彼女を、そのありきたりな学生生活にもどすことばかりを考えていたことは、不誠実な誠実にすぎないのか。 その夜が、結局最後の夜になったわけだが、結局彼女の人生はこれから花開くはずのもので、途中下車のようなその恋のような愛のようなものは、あのグレイの朝に終わって、彼は二度と彼女の部屋を訪れることも、むろんなかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Feb 16, 2006 09:11:38 AM
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