カテゴリ:恋愛都市
一夜限りと思う、叶わぬ恋だったとしても、その成就する行き着く先の、具体的な風景は、そう思い浮かぶわけではなかった。 彼女は通りすがりのちょっとした気まぐれで、恋をしていたが、それは恋のようなもので、彼女に適う男など、どこにも歩いていなかった。 男を捨てるのが趣味だといわれていたが、ある年齢になると、お誘いがすくなくなるものだが、ことしも彼女は男を捨てつづけていた。 春一番がふいて、梅が散り、たぶん桜が咲くころまでにはもつまいと、考えていたが、ある男が、彼女を変化させてしまっていた。 彼女が男を愛したのである。 彼女は男を愛した経験があったが、終わってしまえばそれも儚いもので、それを愛だったとはいえないほど、幼く雅ないものだった。 その男の記憶は彼女のその生活を制約した。そんなものだと考えていたその愛の景色の、おぼろげで、あやうい、若い失敗の、ほのかな、取り返しのつかないものだった。 その愛は与えるもので彼女の余地はなかった。 ある男は、彼女になにも求めなかった。男の側からすると彼女に愛されてなにがどうなるわけではないはずだった。 彼女はしばらく考えて、男に体を与えることにした。 男は彼女に教えた、与えたはずの体が、与えられているとい事実を。 不思議な男だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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