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2010.03.13
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テーマ:鉄道雑談(1541)
カテゴリ:鉄道

「最長片道切符の旅」取材ノート
この本は乗り鉄本で有名らしい『最長片道切符の旅』の取材中(旅行中)に筆者が書き留めたメモを書籍化したものです。1970年代末期の取材旅行からこの本が発行されるまでに約30年の時が経っているので,ページ下部にいくつか脚注が付いています。私が興味を引かれた部分をいくつか紹介しますね。

旭川駅(23ページ脚注5)
まずは北海道の旭川駅。現在の旭川駅の読み方は〔あさひわえき〕ですが,当時の読み方は〔あさひわえき〕だったそうです。

仮乗降場と時刻表(53ページ脚注7)
それから市販されている時刻表ですが,国鉄時代の北海道には駅よりも格下の扱いになる仮乗降場〔(かりじょうこうじょう〕という停留所みたいな駅があったのですが,それは日本交通公社(現・JTB)が発行するB5サイズの全国版時刻表には掲載されていませんでしたが,北海道のみ限定した時刻表『道内時刻表』には仮乗降場も掲載されていたそうです。仮乗降場は国鉄が民営化されてJRになったときに駅に昇格したので,今はJTBの全国版時刻表にも掲載されています(53ページ脚注7)。

五十川駅(74ページ)
JR東日本の羽越本線には「五十川」という名前の駅があります読み方は〔いらがわ〕。難読駅名の一つに入るのかな。人名ですが「五百部」という苗字があります。読み方は〔いおべ〕。これは難読苗字か。五百羅漢という言葉に惑わされて〔ごひゃくべ〕と読んでしまいそうです。

駅本屋(201ページ)
駅の建物のことを普通「駅舎」〔えきしゃ〕って言いますが,正式名称は「駅本屋」〔えきほんや〕です。「本社」とか「本家」というかいうから,駅施設の大本になる建物っていう意味合いなんでしょうね。

ローカル線の改札開始時間(209ページ)
都市部の駅や現在なら自動改札の駅なら,いつでも改札口を通ってホームへ行けますが,国鉄では列車本数の少ないローカル線の駅では列車の到着10分前ぐらいにならないと改札業務が始まりませんでした。ローカル私鉄でもそういう駅があって,ある駅では改札口付近に10分前にならないと改札を始めないという張り紙があって,改札口はチェーンで通行を遮(さえぎ)っていました。しかし既にホーム上にある待合室には客がいたので,私はそれもチェーンを跨いでホームへ行ったのですが,少ししてから駅員が来て私に文句を言ってきたので,言い返して口喧嘩になったことがあります。乗客なんて数えるほどしかいない駅ですからキセルされる損害額より駅員を雇う人件費の方が高くつくと思うんですが。今はどうなったのかな。列車をワンマン運転に切り換えていればあの駅員は余剰人員になるんだけど。

山口線・途中下車印(245ページ)
長距離片道切符の場合は途中下車ができるんですが,途中下車した駅では駅名が入った小さなスタンプを切符に押すことになっています。この本の著者はそのスタンプの捺印位置に拘泥(こだわり)があって,ちょっと不満をメモってます。
下車印   津和野   津和野の駅員の奴!  キップの「枕」と「崎」の間に捺してしまった。津和野はいい駅名だからまあいいが。
著者の切符は北海道の広尾線(廃線)広尾駅(廃駅)から九州の指宿枕崎線枕崎駅までの片道切符で,広尾駅からこの旅を出発しています。そのため山口線の津和野駅に来るまでに何度も途中下車をしているため,著者の切符は途中下車印だらけになっています。津和野駅の駅員も捺す場所に困って,空いていた「枕   崎」の「枕」と「崎」の間に捺印したのでしょう。しかし切符の途中下車印の捺印位置にまで拘泥(こだわり)を持っているとは。こういう拘泥を持っているから本を出版できるのかな。

山口線・仮乗降場(247ページ)
それからまた仮乗降場の話になりますが,山口線にも「本俣賀」〔ほんまたが〕という仮乗降場があったそうです。私は仮乗降場は北海道にしかないと思っていたので,まさか山口線にもあるとは思いませんでした。今は仮乗降場から駅に昇格しています。

通商人(251ページ)
山陰本線・美弥線の長門市駅〔ながとしえき〕のホームの柱には
「通商人の方へ」
「ホームでの商品販売はしないで下さい」
という看板があったそうです。「通商人」という言葉は初めて聞きました。「行商人」なら聞きますが。多分,通商人は行商人のことを意味しているんでしょうね。以前,京成電鉄の朝の列車には,電車1両が行商人専用車両になっている列車がありました。行商の女性たちは荷物が大きいので,そのため専用車両が用意されていたようです。今はもう専用車両はなくなったようです。電車に乗って行商する人がほとんどいなくなったんでしょうね。今は鉄道は使わずにワゴン車などで売りに来ていますもんね。

九州の炭鉱町(259ページ)
九州北部には炭鉱がたくさんありました。今も石炭自体は地下にあるそうなんですが,トンネルを掘って石炭を採掘するのには経費がかかるので,露天掘りで採掘している石炭を輸入する方が安いそうです。発展途上国の場合は人件費も安いし。それと鉄道(機関車)や工場で使う燃料も石炭から重油などに代わりましたから,石炭の需要が減ったのでしょう。坑道は掘らなくなりましたが埋め戻しはしていないらしく,住宅地の地下にはかつての坑道が空洞となって残っているそうです。そのため地盤沈下などが起きていて,住宅が歪んでしまい,雨戸がまともに閉まらないそうです。宇都宮市にも似たようなことが起きてましたね。大谷石を採掘した地下の坑道が空洞のまま放置されていたために住宅地で落盤が起きて,巨大な穴が姿を見せてましたね。

駅員・車掌と運転士の人間関係(284ページ)
284ページにはこんな行(くだり)があります
一般に駅員や車掌は,運転士に一目おいているようだ。運転士の方から声をかけることはまずない。
当時の国鉄の労働組合は大別すると国労動労の二つがありました。他にもいくつか労働組合がありましたが,大きな影響力を持っていたのがこの二つ。動労千葉が3番目かな。さて,国鉄時代の駅員・車掌と運転士の人間関係ですが,これによると,動労(運転士が加入している労働組合)は駅員よりも自分たちの方が格上と見なしていたらしいです。駅員は国労ですね。車掌も国労かな。この本には「駅員や車掌は,運転士に一目おいているようだ」と書いてありますが,駅員や車掌から見ると国鉄時代の動労組合員(運転士)は腫物だったのかもしれませんね。

中途覚醒(298ページ)
このページに限らないんですが,著者は宿泊先よく深夜に目を醒ましていました。中途覚醒が日常化しているような印象を受けたましたが,著者本人はそれで困っている様子はないみたいです。旅行中はサラリーマン的な生活サイクルで過ごしているわけではないから特に困らないのかもしれませんね。

乗廻り屋(318ページ)
列車に乗ることを趣味にしている人たちを鉄道ファン用語で「乗り鉄」と言いますが,作家の大岡昇平はこの本の著者・宮脇俊三を評して「乗廻り屋」と言っていたそうです。著者は人一倍列車に乗っていますから,「乗り鉄」よりも格上なのが「乗廻り屋」ということになるのかな。



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最終更新日  2010.03.13 21:02:40
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