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カテゴリ:音楽
白金ダンステリアが、2011年6月26日をもって、27年の歴史に幕を下ろしたという。日本のディスコ史のみならず、音楽史にも偉大な足跡を残した聖地のひとつであった。
あまりお金があるとは言えない学生時代、友達とワイワイ飲むより、ちょっと背伸びして、R&Bやソウル・ミュージックの好きな少数の仲間だけで、少しでも憧れの世界に浸り学ぼうと、六本木TEMPSを拠点に、所謂ソウル・バーやディスコめぐりをしていた。 その中でも、特に“タイムカプセル感”が強く、ディスコ全盛時代の空気感を感じさせていただいたのが、白金ダンステリアだった。この頃はまだ原稿書きとしてデビューする前だから、完全にこの世界でも「学生」。音楽に合わせて、バシッとステップを合わせてくる大人の皆さんに、ただただ羨望と尊敬の視線を投げかけるしかない。 当時は、ニックさん(日本に数々のステップを紹介するのみならず、ご自身でも新しい踊りを生み出してきた、これまた伝説の人物です!!)もお元気で、ときどきお店に顔を出されていた。業界で知らぬ人なし、ドン勝本さんとは、お店ではお目にかかれなかったけれど、渋谷の音楽イベントでご挨拶させていただいた。「学生」にとっては、皆大先輩であると同時に、師匠とでもお呼びしたい方々である。 さて、お店の熱い活気を吸い込みながら、あるいは格好イイ先輩たちのダンスに胸躍らせながら、眼の端でいつもいつも熱い視線で見ていたのは、実はお店の壁に描かれたエモリアイさんによるイラスト。緑のニット帽をかぶったマーヴィン・ゲイの絵が好き(確か、ウィルソン・ピケットやJBの絵もあったような…とにかく、伝説のシンガーやミュージシャンがたくさん描かれた、とてもハッピーな絵であった)で、いつか剥がして帰りたい…(それは嘘ですが)…くらいインスピレーションを受けまくっていたことを覚えている。 「50年は使える」と言われて買ったPowerMacで、もうすでに砂時計出しながらマウスでCGイラストを描いていた私は、エモリアイさんに触発されて、ソウルの巨人たちを描くようになっていた(その作品を、時々店長の心配りで、TEMPSさんがお店に飾って下さったり、感想を下さったりしたのも懐かしい)。 エモリさんとは、その後台場にSOUL TRAIN CAFEがオープンし、こけら落としにトニーズ(ただしラファエル抜き…苦笑)が来日した際、会場でお目にかかって、はじめてお話しをしたが、緊張してしまって支離滅裂なことしか話せなかった記憶がある。あの頃は、思えばもう音楽の原稿を書かせていただくようになっていたように思う。 思い出はあてもなくどこまでも拡散していくが、とにかく白金ダンステリアとはそういう場所で、お堅いコピー風にいうならば、「ポリシーと実践が両立した、ブラック・ミュージック文化の発信基地」といった趣があった。 その後、お酒をぱったりやめてしまって、お店からは足が遠のいてしまったが、「お酒を飲んでいた時代」の甘酸っぱい記憶をパックしたまま、“白金のタイムカプセル”は本当のタイムカプセルとなってしまった。 だが、だからいいのだ。たくさん素敵な音楽を聞かせていただき、たくさんダンスを教えていただき、たくさんの思い出をくれた伝説は私の思い出をまるごと預かって、いつの日か、忘れかけた頃に大事な何かを思い出させてくれる、そんな気がするのだ。 いまはただ、感謝の言葉を送りたい。ありがとうございました!!(了) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011/07/19 04:00:37 PM
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