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カテゴリ:パリの思い出
パリの3区に決めたアパートは、30平米ほどのワンルームで7階建ての4階にあります。現地ではごくごく標準的な、ひどく古めかしいオートロックに声だけのインターフォン付きで、雰囲気のある古い赤カーペット敷きで石壁の狭い内階段のみのエレベータなしなので、引越しやトランクを持ち歩く旅行のときだけはちょっと大変ですが、おおむね気に入って滞在した三年間はずっとそこに住んでいました。
周囲はアラブ人街からそう遠くはない商業地区で、日本人はあまり見ませんが、韓国人や中国人は多いので悪目立ちせず、観光客などほとんど来ない、ごくごく庶民的な地域です。 あるとき、それまでずっと空いていた地上階(現地では、イギリス同様1Fとは日本で言う二階に当たります)で工事が始まり、こじんまりとしたスペイン風レストランが開店し、安くてそこそこおいしいので喜んでいたのですが、その後しばらくしてから部屋にねずみが出るようになりました。 どぶねずみではない小型のものでしたが、同じ建物に飲食店などが入るとよく被害が出るそうで、壁を食い破って部屋に侵入してきて、夜中に駆回って寝られなかったり、カーペットに糞が落ちていたり、ベッドカバーにおしっこのしみが残っていたりと、耐え難い状況になり、近所の雑貨屋に駆け込んで相談してみました。 食料品を出しておけないし、毎日仕事の後でベッドのリネン類を総洗いするのも厳しいし、病気でも持っていたら目も当てられません。 おもむろに雑貨店の主が出してきたのは、殺鼠剤とネズミ捕りですが、ネズミ捕りはよくある籠型のものの他に、ぱちんとばねで閉じる形のテレビのアニメでしか見たことのないようなものが現役で店頭に並んでいてびっくり。 で、殺鼠剤を撒くのも気が進まないので、できれば部屋からぜんぶ追い出して入ってこないようにしようと思い、壁の穴をふさぐための充填剤と、話の種のつもりでその五センチほどの安価で小さなねずみバサミを二つ購入しました。 帰宅すると、ベッドや家具を動かしてねずみを全部部屋から追い出し、壁をチェックしてすべての穴をみつけ、壁と同じ色の充填剤をたっぷり注ぎ込んで穴をつぶします。 ただし、穴がある場所は穴が空け易い場所であることが多く、充填剤がやわらかいうちに再度突破されたり、すぐその横に新たな穴を作られることも多いので、事前に穴の中にワインのコルクなどをたくさん詰めて障害物を作ると良いようです。 結局、コルク詰めの技を習得するまでに何度か突破され、そうそう毎回家具を動かしてねずみを追うこともできず、背に腹は代えられないので、結果として心の中で手を合わせつつ、オブジェのつもりで買ったねずみバサミに何度かお世話になりました。 壁に穴の空く箇所はだいたい決まって台所のどこかで、家具の配置からほぼ必ず侵入ねずみは冷蔵庫の影に隠れます。壁と冷蔵庫の間の隙間が通路になるので、その先にねずみバサミを仕掛ければ、えさをつけずにほぼ確実に仕留めることができるのです。 こうして、壁の穴のふさぎ方と、ねずみバサミの仕掛け方をマスターし、ようやく再び「ねずみフリー」な自分の部屋を取り戻したのですが、それにしても、明け方頃に、バチン、というねずみバサミの音ととも目が覚めるのは、その後の始末もあわせると、パリ滞在中で最悪な経験の一つと言っていいほど気分が悪いものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.03.01 00:47:38
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