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カテゴリ:読書
宮尾登美子の小説で、主人公の名前は「島村津也」ですが、上村松園(うえむら しょうえん、1875~1949)の伝記です。
絵の題目はほぼそのままですが、主人公同様、登場人物の名前は微妙に変えてあるようで、最初に師事した鈴木松年(すずき しょうねん、1848~1918)が「高木松渓」、次の師の幸野楳嶺(こうの ばいれい、1844~95)が「福野魁嶺」、最後の師の竹内栖鳳(たけうち せいほう、1864~1942)が「西内太鳳」になっています。 基本的に私が見て歩くのは花鳥画で、松園は守備範囲外ですが有名どころなので見る機会は多く、挿絵など一切ない中公文庫を読んでいて興味を引かれたのでミュージアムショップでポストカードブックを入手してみました。 経歴や関係者の名前と本の中で触れられている絵をチェックするのは楽しい作業で、初期の頃の絵をみると微妙に線に違和感があって幸野楳嶺が「荒っぽい筆遣い」と叩いたという小説の記述もなんとなく納得。 下は、本に出てきて特に見たいと思った「人生の花」(本の中では「人生の春」)と「焔」。 前者は、松園が友達の結婚式に招かれ、その晴れ姿に感嘆するとともに自分には果たせぬ女の幸せを思って描かれ、後者は一時結婚も夢見た年下の恋人に捨てられて筆も進まないスランプの中にいたときのもの、と知ると、なんだかいろいろ考えさせられます。 先日の山種美術館の目玉の上村松篁が、未婚の母の上村松園と鈴木松年との子供で、既に有名だった母親に手伝ってもらっていると言われるのが嫌で花鳥画方面に進んだ、という話も、なかなか松篁の華やかな絵からは伺い知れない微妙な話かも。 余談ですが、この小説が面白かったので、ついでに宮尾登美子の「天涯の花」も読んでみたところ、なんというか、こちらはくらくらするようなレトロな時代感あふれる少女小説ですっかり懲りました。 [参考] 「序の舞」(全) 中公文庫 ちいさな美術館「上村松園」青幻社 ※ ポストカードブックです。見たかった「焔」も「序の舞」もありましたが、「人生の花」は入っていません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.09.10 00:08:27
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