【忘れられない(10)】suzu
今日は彼は部活の日。時間も、丁度終わりのころ…。私はそう思って、部活動をしている体育館へと向かった。…………。体育館に着いた時、丁度終わるときだったらしくみんなが集まって先生の話を聞いてるところだった。私は体育館の出入り口辺りで、じっと待った。ドキドキ…。勢いでここに来ちゃったけど…まず、なんて声を掛けよう。第一、彼がどこまで記憶を戻してるのかも解らない…。そもそも記憶が戻ってなくて、アレは単に勢いだったんじゃ…?そんな様な考えが、頭の中をぐるぐる廻る。でも…時間は考える暇を与えてくれなかった。部活動が終わったらしく、部員達がぞろぞろと出入り口の方へと向かってきた。彼が来る…!ど、どうしよう…。ここに来て、急に慌ててしまった。頭の中も真っ白…何も考えられない…。思わず目を瞑って下を向いてしまった。このままやり過ごしちゃおうか…そんなことも、頭に浮かんだ。でも…。「…なぁ」不意に、声が掛かった。彼の声だ…。私は…未だ目を瞑って下を向いたまま。「………」彼は、じっとこっちを見ているみたい。うぅ…変に思われてるかな……しばらくの間、お互い無言。そして、また彼の方から声が掛かった。「教室で、待っててくれるかな…?」「う…うん」私は、そう返事するのだけで精一杯だった。(続く)