尾根のかなたに(父と息子の日航機墜落事故)
英国人探検家ジェームズ・クック(通称キャプテン・クック、1728~79年)が太平洋の航海に使ったとみられる船の残骸が、米東部ロードアイランド州沖の海中で、同州の海洋考古学団体によって発見されたいうニュースを見た。今月19日に欧米メディアが伝えている。発見されたのは5隻で、そのうちの1隻がキャプテン・クックが乗り込み1770年にオーストラリア東部などに到達したエンデバー号とみられる。ダイバーによる潜水調査が続いているというが、25年前から調査をしてきたものらしい。四半世紀もの歳月をかけて、闇の中の海底を探索して発見したというのは浪漫を感じる。尾根のかなたに 父と息子の日航機墜落事故 (小学館文庫) [ 門田隆将 ]しかし、山の中で生きていた家族を探すというのは時間との戦いだ。1985年8月12日の日航ジャンボ機の墜落事故で、520人もの人が亡くなった。以前に読んだ山崎豊子氏の「沈まぬ太陽 第3巻 御巣鷹山編」はフィクションの形で書かれていた。今回読んだ門田隆将氏の「尾根のかなたに 父と息子の日航機墜落事故」はノンフィクションである。この文庫本で、映画監督の若松節朗氏が解説を書いているが、彼の言う通り、「沈まぬ太陽」が日航側の視点で描くものとすれば、「尾根のかなたに」は遺族の側から描くものである。そして、口の重い男たちが語る5つの実話だ。当時、救助に当たった陸上自衛隊員、母と妹を亡くした9歳男児、父を亡くした13歳男児、両親と妹を亡くした男子高校1年生、64歳の父を亡くした歯科医兄弟が語る、事故当時とその後である。四半世紀の時を経て語られる再生の物語は胸を突く。