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カテゴリ:本
「白い犬とワルツを 」 ( 著者: テリー・ケイ / 兼武進(訳)| 出版社: 新潮社 ) アメリカの片田舎が舞台。 長年連れ添った妻に先立たれた老人の、その後の暮らしが淡々と描かれます。 本人も歩行器なしでは外出できないような、健康に難ある状態。 心配した子供たちは暖かくそしてやかましく、何かと世話を焼きたがります。 しかし、彼はあえて1人でやっていくことを望みます。 そんな時、一匹の真っ白な犬が彼の前に現れます。 彼以外の人間の前にはなかなか姿を現さない犬。 誰もがはじめは彼の幻覚だと疑います。 しかし徐々に彼と犬との距離が縮まるつれに、犬の存在はみなの認めるところとなっていきます。 そんな老人と犬との生活が、淡々と詩的な表現で語られていく小説です。 彼は、犬との愛情を深め、そして亡き妻との裕福ではなくとも幸福な思い出に浸りながら、自らの最期までの時を静かに生きていきます。 決して大きな事件は起こらないし、悪人も登場しません。 みんな親切で思いやり深く、老人を見守っていきます。 それだけの小説なのですが、読んでいて胸が温かくなってきます。 この小説は作者自身の両親をモデルにしたものとのこと。 それだけに、登場人物達に愛情が込められているように思います。 そして亡き妻の身代わりのような犬の存在が、老人の孤独をどんなに癒しているかということに思いを馳せると、涙がにじみます。 自分の老後がこのようになるとは思いません。 でも充分に共感できます。 こういう小説をいいなあと思える年になったんだなあ、と思う今日この頃です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年05月27日 00時57分58秒
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