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カテゴリ:本
「世界の中心で、愛をさけぶ」 著者: 片山恭一 出版社:小学館 この大いに売れて売れて売れまくった小説を、いまさら読むことはないだろうと思ってましたが、図書館の書棚にあるのに気付いて、手にとってみました。 ずっと貸出予約が入っていて、書棚に並んでいるのを見たことがなかったのに、ようやくブームが終わったようです。 実は映画は昨年観てました。 それも主婦4人という、おおよそ色気のない組み合わせで観ました。 そして主題歌が流れ、館内が明るくなった時に私達が見たものは、互いに困った顔。 「ねえ、感動した?」 「あっけないよね」 「泣きそびれたよ」 「朔太郎の姉ちゃんのしていたリボン、あのころ流行ったよね」 (そういう細かいところにこだわるのは、A型の私) 単に映画がつまらなかったのか、私達に「高校生の恋愛」映画を感動する若さがなかったのか、はたまたほかに理由があったのか。 「まあとりあえず、話のタネにはなるかな」という感じでした。 あまりにもひねりのない現代版「愛と誠」(観てないけど)に15年経ってもそれをひきずっている現在とが、私の中では「腑に落ちない」ものだったです。 さて、原作。 大まかなあらすじはわかっているせいもあって、泣きはしません。 印象としても、あっさりした小説だな、という感じ。 映画やテレビとは違って、15年経った現在のシーンはほとんどなくて、最後の数ページだけで、それも大澤たかおや緒方直人みたいに泣き崩れたりなんかしなくて、冷静に過去を振り返っている。 それが一番自然ではないでしょうかね。 全体的にも小説が一番説得力はあったかと思います。 2人は、中学生の頃からかなり接近した関係になっていて、高校に入ってからは、ほとんど2人の世界というほど他人の入る余地がないような過ごし方になっている。 それだけにどちらかがいなくなると、半身を失うくらいの喪失感は感じるかもしれない、と理解することはできるわけです。 それでも、描写としてはあっさりしていると思います。 涙に訴えるならば、もっと違う描き方があるだろうと思うし、そもそも作者は「泣くための小説」に重きを置いていないんじゃないかという印象を受けます。 柴崎コウが「号泣した」なんて言うから、宣伝サイドがその方向に盛り上げたという感じじゃないでしょうかね。 小説のタイトルももともと作者が考えたのは全く違ったものだったと聞きますし。 主人公朔ちゃんは、あまり恋人の死を前に落ち込みはするけど自暴自棄になることなく、「恋人の死」について考えます。 大切な人の死をどうとらえていくか、というのがこの小説の主題であって、それを朔ちゃんは恋人アキと語りあい、祖父と語り合う。 そして、最後の数ページに彼なりの結論を出す。 ま、そういう流れで読んでいけば、この小説はお涙頂戴恋愛小説というよりは、わりと理屈っぽい恋愛哲学小説ともいえるのではないでしょうか。 だから、これを読んで号泣したというのは、過剰な感情移入があったとしか思えないのですが……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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