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2005年06月09日
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カテゴリ:
「きもの」
著者:幸田文
出版社:新潮社

明治から大正時代にかけて、東京下町の中流家庭の生まれ育つ少女・るつ子の成長を、きものという観点から描いた小説。
家族との生活を中心に、女学校生活、生活レベルの違う友人たちとのつきあい、姉達の結婚、母の看病、関東大震災、そしてるつ子自身の結婚……が、美しい日本語で描かれています。

当時は今と違って、きものが一般的な着衣であり、洋装が珍しかった時代。
だから、小説に登場するきものは、縮緬の晴れ着から、羊毛や銘仙、化繊の普段着、そして木綿の仕事着まで、ありとあらゆる種類が登場します。
そしてそれらのTPOというものが、描かれます。
着物好きな人には、とても楽しいかもしれません。
最近は普段着の着物というものも流行ってますものね。
私の家の近所でも、そういったたぐいの着物屋さんが増えてます。

小説の話に戻って。
るつ子が生活の1部としてきものと関わり、それが人との関わりとなっていく。
そうした日々の生活の積み重ねを丹念に描いた小説であるといえば、単調そうな読みにくいものかと思われるかもしれません。
しかし、すごくおもしろい。
どんどん読み進めてしまいます。
人と人とのやりとりの中の機微の描き方がすごく見事で、リアルで、しまいには身につまされます。

そして、るつ子のよき相談相手である祖母の言葉を介して、随所随所に、作者自身の信条が顕れます。
それは、どこか背筋が伸びるような矜持というもの、そしてどこまでも相手に対して気配りや思いやりを忘れないという、今の時代には忘れかけてしまっているような人としての基本というものかもしれません。
家族に対してでも、家族だから、娘だから、という甘えだけで好き勝手何を言ってもいいわけではなく、常に相手ならどう考えるのか、ということをいちばん近い家族だからこそ考えてあげなくてはいけないのだと教えられます。

そして、人生には理不尽が付きものであること。
どんなに心砕いて相手を思いやっても、それが通じないこともあるし、逆に疎まれることもある。
どうしても母と芯から通じ合えないでいるるつ子の哀しみに、こちらも涙しました。

小説のラストは、るつ子の結婚、そして初夜のシーンで唐突に終わるのですが、それがまたにくい終わり方です。
さんざんにきものについて言及されてきたのに、ラストはきものを脱がされてしまうのですから。


おまけ。
るつ子の祖母の痛快なやりとりの1例。
女学校に通うるつ子が、母子家庭で貧しい友人に自分の着なくなったきものをあげとうとして、祖母に止められます。
彼女の言い分はこうです。
どんなに貧しくて着る服にも困っているからといって、自分が着古していらなくなったものをあげるなんて、失礼なことである。
施して、自分が自己満足に浸るだけで、相手が喜ぶとは限らない。
それでも何かあげたいと思うのなら、なぜ新品の物をあげないのか。
そういう物を惜しむ気持ちがあるのに、他人に施しなんてしてはならないことである。
そうして、るつ子は考えなおして、友人に新品の反物をあげるのです。
そういう考え方は、今でも充分に通用することですよね。

我が家はいらなくなった衣服を、海外の難民キャンプや貧しい村に衣服を届けるというNPOにちょくちょく提供しています。
こちらとしては、洋服整理のついでで、流行遅れという理由だけでごみになるよりはリサイクルされればいいな程度の気持ちだけど、やはり服を満足に買うことができないという人々は世界中にたくさんいて、とても感謝されると聞きます。
だからといって、何送ってもいいわけではない。
くたびれたものなんて、とんでもない。
気軽に服を買えない人たちだからこそ、長く着られるものを送らなくてはならない。
るつ子の祖母の言葉に、私まで考えさせられました。





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Last updated  2005年06月10日 02時17分14秒
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