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カテゴリ:本
「光の帝国 常野物語」 恩田陸 穏やかで、知的で、権力への志向を持たずに在野に生きる人々、だから「常野」を名乗る、不思議な能力をもった一族がいる。 しかし彼らは、その能力ゆえにひっそりと暮らすことを余儀なくされている。 そんな一族の人々の姿を時にはユーモラスに、時には悲劇的に、時にはホラーチックに……描かれた連作集です。 作者あとがきにありましたが、それぞれが長編になってもおかしくない人物・物語設定で、ゆえに短編で終わってしまうのがもったいない気持ちになります。 それでも終盤に向けて、独立しているように見えたひとつひとつの短編が大きな流れに結びついてきて、なんとなく大きな物語が始まる予感を覚えるのですが、残念ながらそこで終わってしまいます。 これはシリーズ化を念頭においた作品なのかしら、とも思わせます。 事実続編なるものが出ているようですが、私はまだ読んでません。 どんな感じなのでしょう? 私は恩田陸さんの作品が好きで、これまで全部といわないまでも結構作品を読んできたのですが、いつも感じるのは作者のちょっとシニカルな視点。 ノスタルジーを描きながらもあまり情緒に流されずに、ズバリと切り込まれるような冷めた指摘が心地よかったりします。 しかし、この小説にはそんなカラーはあまりなくて、どちらかというとハートウォーミングな作品が多かったように思います。 戦時中の常野一族を襲う悲劇を描いた表題作「光の帝国」。 自分の隠された能力に目覚めた女性の、新たな人生のはじまりと家族の再生を描いた「黒い塔」。 常野一族の幸福な邂逅を描いた「国道を降りて…」。 上記の3作では、ついつい泣きました。 恩田陸の小説で泣いたのは初めてでした。 あ、そんなことないか。 「黒と茶の幻想」でも泣いたっけ。 そういえば、何年か前に、NHKでテレビドラマ化されていましたが、ずいぶんストーリーが違ったものになってたことを小説を今回読んで知りました。 小説のエッセンスだけを借りただけというか……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年06月28日 00時44分13秒
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