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カテゴリ:本
●拝金主義の有名画廊のオーナー(60才位)とそのお抱えの若手女流画家。 ●プロ意識の高い空き巣狙い(30代半ば)。 ●カルト教団の幹部と信者である若者。 ●心理カウンセラーの女医とサッカー選手のW不倫カップル(共に30代)。 ●連続40社から不採用通知を受けた失業中の40代の男と野良老犬。 仙台を舞台にそれらの人々の物語が平行して語られます。 それぞれが、それぞれの事情や目的に沿って動き出そうとして、それぞれの「事件」が始まります。 大抵の人は、「これらの互いに関係なさそうにみえる人々がどこかで繋がっていく小説なんだろう」と、見当がつくのではないかと思います。 まあ、その通りです。 でも、その繋がりが、ちょっとずつ見え始め、終盤で見事に繋がると、やはり、「すっきり!!」気分爽快となります。 その上、ちょっとした技が盛り込まれているので、途中途中で「あれれ?」と首をかしげる箇所が、その作者のしかけたトリックがわかると一気に解決するので、これも気持ちいいです。 それから、エッシャーの有名な作品が作品世界の象徴として、ちょくちょく記述が登場します。 (屋上に階段がついていて、それを兵士達が歩いているだまし絵) 小説の表紙に使用されているので、ストーリーの枠組が見えてくるにつれて、思わずしみじみと表紙を眺めてしまいます。 兵士たちはずっと階段を登り続けているはずなのに、もとの位置に戻っている。 先頭も終わりもない、そのあれれー?が、この小説のキーという感じです。 そういえば、作者プロフィールに「映画好きで、映画の影響大」と紹介されてましたが、この小説も映像化してもおもしろそうです。 ストーリーをほとんどいじらずに、そのまま映像化できそうです。 作者のしかけたトリックも、映像でも充分描けるトリックだと思うし。 ちょっとしたオムニバス映画のようで、すべて繋がっているという内容。 海外の映画に結構ありそうなプロットですよね。 伊坂幸太郎の小説を読むのは、「オーデュボンの祈り」に続いて2冊目です。 その作者のデビュー作である「オーデュボンの祈り」は、こんなミステリーもあるんだなあと、すごく新鮮で感動的でした。 荒唐無稽ながら、物語世界がきちんと構築されていて、ラストは思わず泣いてしまうくらいに不思議な優しさに満ちたミステリーでした。 しかし、この小説はまったくテイストが違っていて、これもまた新鮮な驚き。 でも、どちらにしても共通しているのが、「納まりがいい」ということ。 作者の人柄か、計算かわからないけど、読後感がいいです。 いい人は報われるし、イヤな人はそれなりの報いを受ける。 そんな風に、さりげなく「因果応報・勧善懲悪」が盛り込まれているから、読み手はほっとするし、読んだ後にいやな気分を引きずらないですみます。 そういうのをご都合主義だとか、現実的でないという意見もあるかもしれません。 しかし、今は、現実世界の方がイヤな事件であふれているのだから、物語の世界くらいは、すっきりと気分よく終わって欲しいと思うのですけどね。 「ラッシュライフ」伊坂幸太郎 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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