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カテゴリ:本
どこから見ても、ぶたのぬいぐるみ。 バレーボールの大きさで、ピンク色、目は黒いビーズが縫い付けられている。 ぬいぐるみなのに、実は人間社会の一員として生きている。 なんと、中身は中年のおじさん。 名前は、山崎ぶたぶた。 そんなシュールなぬいぐるみのぶたぶたとの出会いと別れを描く連作短編集となっています。 ぶたぶたはある時はベビーシッター会社の社長、ある時はタクシー運転手、ある時は天才シェフ……と、短編ごとに生業は違っています。 短編ごとに替わる主人公たちは、初めて出会うぶたぶたに驚き(当然か)、困惑します。 しかし彼は、社会にごくごく自然に馴染んでいて、周囲の人間たちも彼に違和感を全く抱いていない様子。 そのギャップがおかしいです。 たまに冷静にツッコミが入るところもおかしいです。 「もしかしたら裸の王様のように、自分しか見えていないのだろうか」などと主人公たちは当然のごとく悩んだりもします。 社会に異形の姿で現れるぶたぶた。 なぜ、ブタのぬいぐるみの姿で存在しているのか。 そんなことは一切明かされません。 なんだかそれって、カフカ的不条理な文学世界を彷彿とさせるような…… ……な~んて、そんな重苦しさはみじんもなく、全体にほのぼのとした和み系小説となっています。 なんたって、ぶたのぬいぐるみが主役。 彼が動いているところを想像してみて下さい。 不気味というよりは、やっぱりかわいいではありませんか。 しかし、終わりの3篇は幾分シリアスなお話になっています。 ぶたのぬいぐるみでも、そういうストーリーは可能なんだなあ、という感じです。 最終話は、全体の総まとめにもなっていて、ぶたぶたの秘密が少し明かされます。 図書館で検索してみたら、どうやらこれはシリーズ化されている模様。 たぶん……、いずれ続編も探して読んでしまいそうです。 「ぶたぶた」矢崎存美 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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