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2005年08月27日
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カテゴリ:
蕁麻の家

詩人・萩原朔太郎の娘で作家である萩原葉子の半生を描いた自伝的小説です。

萩原朔太郎存命中の少女時代を描いた、第1部「蕁麻(いらくさ)の家」。
彼女の結婚生活を描いた第2部「閉ざされた庭」。
離婚後、作家として人々に注目され現在にいたる彼女の後半生と、家族との生活を描いた第3部「輪廻の暦」。

それぞれ、時をおいて別々に単行本になっていたものを、1冊にまとめた本となっています。
それに加えて、エッセイ「歳月―父・朔太郎への手紙」と、彼女の半生を年表化されたものを併せて収録されています。

有名詩人を父に持ち、自らも流行作家となって活躍する萩原葉子さん。
今まで、作品は読んだことはありませんでした。
そういう人の自伝となれば、どんなハイソで知的な家庭生活が描かれるのだろう、もしくは偉大な父を持つ重圧なんかが描かれるのだろうか、なんて軽い気持ちで読み始めたら、全く違っていました。

かなり悲惨で暗い、といえる人生を送っています。

第一部。

父は確かに世に認められた人物、しかし昭和初期の軍国国家に傾倒しつつある時代においては、必ずしも万人に賞賛される存在ではない。
そのうえ、文学の中だけに生き、家庭という実生活とは別世界の住人でもありました。
おまけに、母は幼少の頃、若い男と駆け落ちして行方不明。
妹は、恋に生きた母の犠牲となり、脳に直る見込みのない障害を持ってしまいます。
そして、父より孫の世話を託された祖母は、嫁憎さのあまり孫まで憎み、彼女たち姉妹をさんざんに虐待します。

よって、作者の少女時代は、良家に生まれ育ちながらも、祖母や叔母たち親戚に蔑まれ、ネグレクトされ、みすぼらしく孤独なものになっていきます。
それでも、虐待する祖母をやはり育ての母として頼り愛する気持ちは常にあるし、虐待を見て見ぬ振りし続ける父に対する敬愛の気持ちは生涯変わらない。
その辺が、彼女の救われなさでありましょう。

そんな育てられをした子供がどのような人間になるか。
自分に自信をもてずに、自分自身をとるにたらない人物であるかのように過小評価してしまうような人間になってしまうわけです。
だから、自分自身の力で人生を掴みとるようなことができない。
そのことから引き起こしてしまう若さと無知による過ち。
それは、取り返しのつかない事態にまで発展します。

読んでいて、気が滅入るような暗い少女&青春時代に、追い討ちをかけるような事件。
作者を気の毒に思う以上に、彼女の情けなさに嫌悪感すら覚えてしまいます。
しかし、ページを繰るのを止められません。
自伝であると同時に小説という形態を保っているからであり、読ませる力のある人が描いたものであるからなんでしょう。

そして第2部。

父の死後、そして家名を汚したとされ、祖母たち親戚たちの策略で身一つで家から追い出されるように嫁にいく作者。

戦時下&戦後の貧しい生活。
親戚たちの残酷な仕打ち。
劣等感の塊の夫。(妻もか?)
2人の心の通い合わない結婚生活。
満足を得られない夫婦の夜の営み。
(しかし子供はできる)
おまけに知恵遅れの妹との同居もこれに加わります。

次第に家庭は修羅場と化していきます。

これまた、気の滅入るような彼女の人生。
不幸が伝染しそうな気分にさえなります。
たまたまちょっと落ち込んでいる時に読み出してしまったので、読んでいる自分までなんだか苦しいくらいにやり切れない鬱屈がたまってきました。
それでも、本を閉じることができません。

第三部。

どうにかこうにか離婚が成立し、彼女は息子と妹を養いながら、自立の道を探ります。
亡き父の友人に勧められて、文章を書き始めた作者は、瞬く間にその才能を開化し、父の友人たちの助けもあって一躍流行作家の地位に踊り出ます。
若い恋人もでき、ようやくハッピーエンドか思いきや、そうは問屋は下ろさない。

行方不明だった母親と再会。
やがて年下の夫に捨てられた母親を引き取ることになります。
年をとっても女であることを捨てられない母。
娘である作者と張り合い嫉妬し、我侭放題で妹とともに彼女をさんざんに振りまわします。
おまけに晩年はボケてしまい、これまたさらなる厄介を背負い込む羽目に。

つくづく彼女は家族運のない人なのか、不幸を呼び込んでしまう稀有な体質の持ち主なのか……。

救いは、彼女の息子。
かなりよくできた人間に成長します。

そして母の死後、彼女も60才過ぎて、ようやく自分だけの自由な人生を歩み出すことになります。

彼女は、いろいろあった人生を肯定し、そして若い頃に手に入れられなかったことを後悔することなく、新しいことにチャレンジしていきます。
幾つになっても始めるのに遅くはない、というポリシーは素晴らしいです。
年を理由に何事もあきらめてしまったら、彼女の人生は何を得られずに終わっていたでしょうから。

500ページほどもある本でしたが、一気に読めてしまいました。
詳細で、かなり赤裸々な告白小説です。
人にはなかなか言えないような箇所もたくさんあります。
それでも、恐らく彼女は書くことで自分の中の澱を、外に吐き出せたのかもしれません。
自分の人生を肯定したかったのかもしれません。
この小説は彼女にとって「遺書」のようなものだと書いてあります。

しかし、すべて仮名で描かれているとはいえ、後ろに彼女の年表もついているし、誰が誰だかちゃんとわかります。
私小説って、描かれた方はどんな思いをするのでしょう。
かなり悪者になってしまった親戚などに訴えられたりしないのでしょうかね。
自分自身をも美化することなく、客観的に描いたものだとは思いますが、やはり彼女の主観が入り込まないわけはない。
彼女を虐げてきた方の言い分も聞いてみたい気もします。


追記
萩原葉子氏は、今年の7月に亡くなられていました。
(と、つい最近知りました)
新聞雑誌などの追悼記によると、この小説が世に出たとたん、文壇でも世間でも話題騒然となったそうです。
確かに、有名詩人(著者の父)の私生活がかなりスキャンダラスな内容で暴露されてしまいましたからね……。





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Last updated  2005年08月27日 23時21分51秒
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