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2005年10月02日
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カテゴリ:
彼女の部屋

「彼女の部屋 」
著者:藤野千夜
出版社:講談社

6篇からなる短編集。
いずれも普通の女性が主人公。
普通の人と普通の人とのやりとりの妙や、ちょっとしたズレが上手いなと思わせる小説でした。
また、地の文でちょこちょこ「ツッコミ」が入るところも楽しいです。

お気に入りは下記の2編。

北原さんとはさほど仲良くないのに、というより、どちらかというと苦手なタイプなのに、主人公恭子がなかなか断われない気弱な性格なために、彼女に振り回されてしまう表題作「彼女の部屋」。
「とほほ」な感じのとぼけた味わいがおもしろいのだけど、恭子の離婚した夫との回想部分は、完全にずれてしまった2人の関係が端的に描かれていて、そこだけは気持ちが落込むような寒さがありました。

1番のお気に入りは、死んだ父と家族との邂逅を描いた「父の帰宅」。
数年前に私も父を亡くしているので、強い共感と憧憬を持って読みました。
ある日、8年前に他界した父が、ひょっこり帰ってきます。
結婚して家を出ている主人公ともえも実家に呼び出されます。
幽霊だかなんだかわからないけど、普通に帰宅する父に、家族(ともえ、母、兄夫婦)はすごく驚くも、普通に喜び、普通に迎えます。
そんな父と家族達とのやりとりが、あまりに普通に描かれます。
おかしいのは、みんなので父のお墓参りに行くところ。
お墓に入っているはずの本人も一緒に手を合わせるところなんかはシュールで笑えます。
そして、何日かしたら、また彼は行ってしまうのだけど……。
ありえないけど、実際にそういうことが起こるといいなと思わせる話でした。
在りし日の家族の食卓を思い出して、ちょっと切なくもなりました。





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Last updated  2005年10月03日 03時04分48秒
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