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カテゴリ:本
「人のセックスを笑うな」 著者:山崎ナオコーラ 出版社:河出書房新社 わりと最近、文藝賞受賞し、話題になった作品です。 短編といってもいいくらいの、薄い本です。 美術専門学校に通う19才のオレ。 その学校の講師である39才のユリ。 その年の差20才の2人の恋のお話です。 女性が年上で、年の差20才のカップルを描いた小説といえば、最近映画化された絵國香織「東京タワー」が有名です。 その年上の女性を黒木瞳(年齢不祥の美人女優)が演じたように、小説でも彼女は、40才といえども美しくてアンニュイで洗練されていて、その上賢くて実業家で……とまあ、セレブな人として描かれます。 人妻のくせして全く生活感のない、「絵に書いたような大人の女性」であって、そりゃ20才の男の子(映画では岡田准一くん)でもメロメロになってしまうでしょうよ、……と、たぶん、世間の大半の40才前後の女性は自分には関係ない夢物語として、「東京タワー」を読んだのではないでしょうか。 ところが、本書のユリは、そうではない。 人妻であるところは同じ。 でも、見た目、見るからに39才。 年相応に39才の女性。 一般の女性よりも身なりに構わないたちなので、お肌はかさかさしてるし、髪もぼさぼさ。 まあ、本職が画家なので、そういう風貌も「らしい」のですが。 で、下腹もぶよぶよしてる。 そのへん、リアルな39才。 それでいて、ちっとも洗練された「大人の女性」ではないし、結構子供っぽい。 アーティストなので、ちょっと浮世離れもしてる。 そんな39才の女性との恋愛模様が、19才のオレの視点で淡々と描かれてます。 文藝賞受賞だけあって(?)、文体も言葉遣いもひねりがあって新鮮で、いかにも「河出書房新社」から出ている本だなあと実感します。 (意味通じるでしょうか) で、その若いオレは、きちんと恋愛してる。 どちらかというと、彼女より、ご執心な様子。 彼女の下腹までいとおしく感じている様子。 恋をすれば、相手がいかなる女性だろうと、それがまるごと恋の相手と、いうことでしょうか。 いわゆる不倫の関係であるけど、そういう言葉のイメージからくる陰湿さは全くなくて、そんな状況下であることも、年齢差さえもあまり感じさせない、普通の恋愛関係として描かれてます。 彼女のだんなさんだって登場して、本人もあせったりするけど、まったく修羅場の様相も見えません。 これまた「東京タワー」とは対極のリアルのなさかも……なんて、思ったりして……。 結局のところ、描いているのは若い女性だから、実際の19才の男の子の心理としてはどうなんだろう……と、そんなこと言ったら、小説の感想としては身も蓋もないですし……。 しかし、世間には確かに、驚くような年の差カップルというのが存在してます。 自分の娘と同い年の男の子と恋に落ちたり、自分の母親と同じくらいの女性と結婚したり……なんていうのが、テレビに登場したりしてます。 それは、正直言ってドラマのように「美しい」カップルではない。 だけど、それでも2人の間には、たぶん一般的遺伝子レベルの求愛本能を越えたところの「恋」が生まれたということでしょう。 そう考えると、「リアルじゃない」とは言いきれないし、そう思ってしまうのは偏狭な思考だということだし、……。 考えてみれば、実際はただのその辺の人なのに、誰だって恋している間はそういう人をも「神が遣わした最高の存在」にまで引き上げてしまうわけです。 だから、それが相手がいかなる人でも当てはまるということですかね。 なんだか、本の感想から離れてしまったような。 すみません。 たぶん、きちんと読み込めていないんでしょうね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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