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カテゴリ:本
「ニッポン硬貨の謎 ――エラリー・クイーン最後の事件」
著者:北村薫 出版社:東京創元社 北村薫は好きな作家です。 エラリー・クイーンは、かつて夢中になって読んだ作家です。 だから、北村薫がエラリー・クイーンの生誕百周年を記念して、クイーンの遺稿を翻訳したという体裁で描かれたパスティーシュ を執筆したとなれば、やはり読まなくてはという気になります。 1977年、ミステリー作家で名探偵のエラリー・クイーンが出版社の招きで来日。 そこで遭遇する東京で続発する幼児殺害事件と、怪しい両替男にまつわる〈50円玉20枚の謎〉事件。 彼は当然のごとく二つの事件の関連を見事に解き明かし、事件を解決するのでありました。 本のタイトルは、クイーンの初期の作品である国名シリーズのもじり。 でも、内容は「クイーン最後の事件」というサブタイトルがついているように、 クイーンの後期の作品の作風で描かれてます。 ……と、書くとすでにエラリー・クイーンを読んでいない方には何のこっちゃ、という感じになってしまう。 パスティーシュ、という形態の小説であるために、元ネタがわかって読まなくてはおもしろさはわからないわけです。 実際、単独で読んでもおもしろいか、というと、私としては、そうは思わないです。 文体もいつもの北村薫ではないし、ストーリー展開もいつもの北村薫ではない。 (だって、パスティーシュだし) ミステリーとしても、「そんなのあり?」という事件解決です。 かなり乱暴な謎ときです。 というか、そういうのってただのこじつけというのでは……とも思えてしまいます。 でもこれは、北村薫のせいというよりは、クイーンの後期作品の作風だと考えるとそうだろうな、ということになってしまう。 で、個人的には、「厄災の町」や「緋文字」を読んであまり好みではないと思ったというかすかな昔の記憶の印象のままの感想をこの本にも持ってしまう、てな感じですか。 そういう意味では、きちんとクイーンの小説世界を再現しているなあということになるわけです。 そして、たぶんこの本の主目的が、ミステリー部分よりも、ストーリーの中で登場人物によって語られる「クイーンの作品論」にあることも大きなポイント。 クイーンの作品をこんなに愛している人(北村氏)は、こんなに深く作品を読んでいるんだなあと、感心させられます。 そんなわけで、これからこの本を読まれる方には、少なくとも下記のクイーンの作品2作を読んで予習してからどうぞ。 エラリー・クイーン 「シャム双生児の謎」 「緋文字」 もちろん、他の作品も読んでこの2作品と比較できるくらいにクイーン通になっていれば、さらに言うことないでしょう。 私はすべて、うろ覚えの記憶のままに読んでいたので、やはり楽しさは半減していたと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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