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2005年11月22日
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カテゴリ:
恋の始めは、相手のすべてが新鮮で、すべてが愛おしく思えたりする。
相手の短所さえ、愛せてしまう。
というより、相手の短所が目に入らない。
というより、相手の短所を見なかったことにしてしまう。

でも、恋愛が軌道にのって、相手との関係が日常になってくると、相手の短所がどうにも気になってくる。
これさえなかったらいいのに、と思えてくる。

その気持ちが積もり積もってくると、それが恋愛関係全体に影響を及ぼしてくる。
その短所が許しがたいことまでになると、相手とともに過ごすことも苦痛となってくる。
それがなかったら、とても波長のあう相性のいい、「神がわざわざ引き合わせてくれた」くらいに思えた相手なのに……。

そういうことって、よくあることだと思います。
そんな恋愛状態を描いた連作集が、角田光代の「太陽と毒ぐも」。
さまざまな「どうにも気になってしまう相手の性癖」が、描かれてます。

太陽と毒ぐも
「太陽と毒ぐも」
著者:角田光代
出版社:マガジンハウス

風呂嫌いの彼女。
迷信深い彼女。
買い物魔の彼。
おしゃべりの彼女。
日々イベントと記念日な彼女。
ジャイアンツ命の彼。
万引き癖のある彼女。
お菓子がご飯代わりの彼女。
大酒飲みで酒乱の彼女。

それぞれの性癖に悩むそれぞれの相手の我慢や憤りや鬱屈がリアルだけど滑稽に描かれてます。
我慢を通り越してキレテしまったり、相手に逆ギレされたり、過程も結果もさまざま。
カップルの会話も上手いです。
性癖って、本人にとってはほとんど意識しないくらいのことだから、相手に非難されてもそれが相手にとってそれだけ不快にさせているかなんて、想像できない。
または、さんざん指摘されているだけに、妙に卑屈になったり、少しでも正当化しようと理論武装している。
だから、2人の会話は噛み合わなくて、平行線を辿ってしまう。
その描き方も上手いです。
夫婦、カップルのケンカをそのまま写し取ったみたい。
具体的内容は自分には当てはまらないけど、かなり身につまされます。

それから、日常ではこれ以上ないくらいうまくいっているのに、旅先で相互不信に陥るカップルの話。
これも、すごくわかる~と納得。
旅先でも日本にいる感覚でいてしまう危機感のない彼女。
旅慣れているつもりで、「日本人は狙われやすいから」と、何に対しても疑心暗鬼になってしまって旅を無邪気に楽しめない彼。
対照的カップルのやりとりが笑えます。
航空機だけのフリープランの旅をすると実感できると思います。
実際には、旅の上ではこんなに両極端な人間同士の対決じゃなくて、自分の中でそういう葛藤に陥るのだけど。

書き下ろしの最後の話だけは、毛色が変わります。
誰もが認めるダメ男となぜか別れようとしない彼女の話。
これ、という明快な理由が描かれるわけではないのだけど、それまでの話をしめくくりだと考えると、なんとなくわかるような気がします。
逆、なんですね。






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Last updated  2005年11月22日 17時32分04秒
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