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2006年01月06日
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カテゴリ:
コールドマウンテン(上巻)

映画化もされましたから、そちらで観ている方も多いかもしれません。

南北戦争末期のアメリカ・ノースキャロライナ。
負傷兵インマンは、故郷の山村コールドマウンテンに残した恋人エイダのもとに戻ろうと軍を脱走します。
物語は、インマンの故郷までの旅(ひたすら徒歩)と、恋人エイダの故郷での生活が交互に描かれています。
彼らは無事再会を果たせるのか――。
というのが物語の骨格。
アメリカの大自然を背景に、詩的な言葉で描かれた大作です。

インマンの旅は、戦争末期の、経済が破綻し人心荒廃を極めた無法状態の中で、脱走兵という立場の道行きだけに非常に危険と困難に満ちています。
その上、アメリカの大自然という脅威が彼を苦しめ、そして常に飢えとの戦いも強いられます。
つまり彼の旅は、彼を取り囲むすべてのものからのサバイバルということ。
時には殺し合いにもなるし、食べ物をめぐってのかけひきだって起こる。
そして何よりも、4年間の戦場生活で心身ともに疲弊してしまった彼自身の葛藤や矛盾も抱え込んでいます。
極悪人、小悪人、善人、世捨て人、そして普通の人々……、彼が出会う人々は皆極限状態にあり、それだからこそ、その人の人性がダイレクトに現れる。
その中で、彼はいろいろな生に出会いながら、自分自身の生き方の方向を定めていきます。

またエイダも、安穏と故郷で暮らしているわけではありません。
神父だった父を亡くし、貨幣経済が破綻し、財産がほとんど無に帰した状態に陥ります。
このままいけば餓死寸前。
もともと彼女は、チャールストンの都会育ち。
父の宣教のために共に山間の村にやってきた彼女は、これまで肉体労働には無縁のお嬢様だったのです。
といっても、すでにチャールストンに帰る場所もない。
よって、自然豊かなこの地に残ることを覚悟するのです。
つまり、食べていくために、土地を耕し、家畜を育てるという生き方を選択することを意味するのです。
そして、ルビーという自然界の申し子のような少女を協力者に得て、彼女のサバイバルが始まるのです。
(ルビーの父親が、すごい出色の描かれ方をされてます)

そんな彼らの物語が、単なる恋愛小説という範疇で収まるわけもありません。
もちろん、回想の中で彼らの出会いから恋に発展する経過も描かれるし、互いが互いを思う箇所も随所に出てはくる。
でも、物語の中心は、旅の中の男の生活と、大地に根ざそうとする女の生活。
読んでいて始終感じるのは、二人の主人公とその周りの人間たちの「生きる意思」の強さ。
生きる意味を見出せない人の多い今の世において、シンプルに答えを提示しているかのようです。
生きているのだから、生き抜くために努力をする。
その根源的な人々の営みのあり方に、圧倒されます。

しかし、描かれ方はちっとも仰々しくありません。
美しい自然描写も、生々しい殺戮の場面も、同じリズムで淡々と。
全編、感情を抑えた詩的な表現で描かれ、それだけにじわじわ胸に効いてきます。
「お涙頂戴」のメロドラマな描かれ方は全くされていないから、滂沱の涙にはならないけど、それだけに内容の濃さがずっしり胸にこたえるという感じ。

もっとも……、
アメリカ人にとっては、南北戦争というのが、歴史上で大きな位置づけにあるはず。
世界史の一コマとしてしか知りえない日本人とはとらえ方が違うはず。
だから、残念ながら、彼らにとっての南北戦争の意味の大きさを、私には実感も深読みできません。

ラストの4ページほどのエピローグは、終戦から10年後の牧歌的なコールドマウンテンの生活が描かれます。
それが、またじんわりと余韻を残します。


チャールズ・フレイジャー「コールドマウンテン」(新潮社)





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Last updated  2006年01月07日 00時47分02秒
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