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カテゴリ:本
身近に起きる猟奇的殺人事件に興味を持って、近付いていく高校生コンビ(男1女1)。 彼らといろんなタイプの猟奇的殺人者との関わりを描いた連作短編集となってます。 さまざまなミステリー的手法で描かれてますので、それぞれの話をそれぞれに楽しめる趣向となってます。 そもそも、二人が殺人者をみつけようと動くのは、純粋に興味の対象だから。 殺人者をみつけて警察に通報しよう、とか、殺人者を断罪しよう、とか、そういう正義感は彼らはまったく持ち合わせてません。 それぞれに、興味の方向はちょっとずれているのだけど、猟奇的殺人者に近付いて、「猟奇的殺人」という世界観を自分のものにしたい、という願望で動いているという感じです。 自ら、自分の欲求を理解しているし、そのことについて、何のやましさも良心の痛みも持たない主人公(主に語り手である男子高生)たち。 しかし、その冷静な語り口で、淡々と殺人事件が語られるので、描かれる内容の陰惨さで読み手がグロッキーになることはありません。 鮮血飛び散る凄惨な事件が、瞬時に乾燥してさらりとしたものになっているイメージ。 人体の切断面にしたたる血が、すばやく凝固して読者を汚さない、てなイメージ。 猟奇的殺人を扱ったミステリーは、絶対受け付けない私でも、読めました。 おもしろいのは、主人公たちが単純に興味から殺人者に近付いているのだけど、結局のところ彼らの行動が殺人者たちにとって、抑止力になってしまうところ。 コンビの二人はそれぞれ、違った行動や巻き込まれ方をしているんだけど、結果的にコンビとしての連係プレーが、殺人者たちは追い詰められます。 どの話も、最終的には、主人公たちが殺人事件を「それなりの形」で収めてしまうというパターンで終わり、そこのところは、無味乾燥な主人公に代わって、作者自身の良心の表れといえましょうか。 だから、読み手もある意味すっきり。 そして、そんな主人公たちに嫌悪感を持たないで読めるのも、作者の筆力なんでしょうね。 だからといって、共感もしないけど。 でも、彼らと殺人者たちの、その間にあるもの、を考えると、それは決して否定できないな、と思います。 読んでない方には、「何がなんだか?」みたいな感想ですみません。 ミステリーの感想文は、どこまで書いていいやらで悩みます。 たぶん、これでも書きすぎてると思います。 ごめんなさい。 「GOTH リストカット事件」 著者:乙一 出版社:角川書店 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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