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カテゴリ:映画
「イルマーレ」 製作 2000年、韓国 原題「時越愛」 監督 イ・ヒョンスン 出演 イ・ジョンジェ チョン・ジヒョン 海辺に建つ一軒家「イルマーレ」(イタリア語で「海」)。 1997年の暮れ、この家に越してきたソンヒョン。 彼は、郵便受けに見知らぬ女性ウンジュからの手紙があるのを発見する。 「イルマーレに住んでいたものです。 私宛の手紙を転送してください」 しかし、彼がこの家の初の住人のはず。 それも、手紙の日付は2年後の99年になっていた。 イルマーレの郵便箱(それがタイムマシーンのような役割を果たしている)を通じて、2000年に生きる女性と1998年に生きる男性が手紙をやり取りし、やがて心を寄せ合うようになる。 そんな二人の姿が、美しい映像の中で描かれます。 携帯でもメールでもない、手紙を媒介とした交流。 そのやりとりに生じる、ちょっとしたタイムラグ(そもそも2年という開きもあるのだけど)が、二人の気持ちを盛り上げます。 そして、いつしか互いに互いの抱える孤独を打ち明けあうようになります。 建築家の卵であるソンヒョンは、高名な建築家である父に捨てられた過去がある。 その父と和解できないまま、父は亡くなってしまう。 声優であるウンジュは、留学していた恋人との恋愛が破局を迎えている。 自分が仕事を選んだために、彼の愛を失ってしまった自分の生き方までも迷ってしまう。 そんな互いの孤独に寄り添うように、互いの言葉が互いを癒していきます。 気持ちは触れ合っているけど、ふたりの間には、2年という時の壁が立ちはだかっている。 同じ時間に、同じ場所で同じことをしても、となりにいるべき人はいない。 98年のソンヒョンがウンジュに会いに行っても、その時点では彼女にとっては彼は、通りすがりの見知らぬ男に過ぎない。 2000年のウンジュが、ソンヒョンと会う約束しても、約束の時間に彼が現れない。 その理由も、98年のソンヒョンにわかるわけもない。 そのもどかしさが、ふたりの気持ちをせつなく盛り上げます。 ストーリーのオチは、見ていてなんとなく予感できます。 だけど、物語の結末の行方よりも、互いが心を開き打ち解けあう過程に、気持ちが入りました。 ストーリーは、静かに淡々と進みます。 静かで美しい風景、スタイリッシュなデザインのイルマーレ、淡々と描かれる互いの日常、……全編通して感じるのは、静けさと寂しさとせつなさ。 寂しい、その感情が否定でない形で描かれているという感じです。 主役ふたりの抑えた演技もいいです。 終盤のクライマックスには、薄々わかってた通りの展開に関わらず、せつなさに思わず胸が締め付けられました。 そして、ラストシーン。 新たな物語の始まりです。 どう展開していくのか、見届けたいけど、エンドロールとなります。 深夜ひとりで見ていて、見終わった後に、私自身まで「寂しさ」に包まれてしまいました。 それは、ちょっと甘美な、胸が痛くなる寂しさでした。 ジャンルとしては、SFファンタジー。 しかし、SFっぽさはみじんも感じない、ラブストーリーになってます。 ついでにアジアっぽさも全く感じません。 きっとふたりはキムチなんて食べないんだろうな、なんてことまで思わせてしまうくらい無国籍なイメージの映像です。 韓国ドラマにありがちな、仰々しさもメロドラマも兄弟確執も出生の秘密もありません。 どこまでも、淡々と静かです。 あ、でもヒロインが交通事故にあったりしているあたり、やはり韓流かも。 韓国って交通事故が多いんでしょうかねえ。 ドラマでもやたらに主人公たちが交通事故にあうし。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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