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カテゴリ:本
珍しく今日は、マンガの感想。
瞬きもせず(1)~(4) 集英社文庫 著者: 紡木たく 廊下ですれ違ったときに、目が合った。 それだけで、どきどきする。 グランドを走る姿を見つけた。 それだけで嬉しい。 夏祭りに一緒に行くメンバーに彼も入っている。 何を着ていこう。 二人きりで帰ることになった。 何を話せばいいのだろう。 みんなは私たちが付き合っていると思っている。 でも、彼は自分を本当に好きなのかわからない。 そんな、誰もが持つ淡い初恋の思い出。 地方(山口県岩国周辺の田舎町)の高校を舞台に、かよ子と紺野くんの恋が描かれます。 誰もが経験したかもしれない、初恋。 相手の何気ない素振りや言葉に一喜一憂してしまう。 二人きりになると、何も話せなくなってしまう。 相手に対して自信が持てずに、1人で空回りしてしまう。 そんな、初恋のシーンが細やかに描かれているマンガです。 二人の恋はほんとに不器用。 そんなので、お話になるのかと思うくらいに、もどかしいくらいに進まない恋です。 (キスするのに3年かかるくらい) しかし、余計な説明なく感情表現だけで細やかに描かれるというマンガ独特の表現によって、そのじれったい二人の関係が、とてもリアルに迫ってきます。 「廊下で目が合って、どきどきする。」 そんなあまりにたわいもないとも言えるようなシーンにおいてさえ、読み手側もある種の緊張を覚えたりするのです。 まさに、自分の初恋の追体験です。 そして、彼女たちをとりまく友人や家族をきちんと書くことで、彼女たちの生活を書くことにも成功しています。 片田舎にに住む、少年たちの閉塞感。 豊かでもおしゃれでもない家庭での場面と家族との関わり。 学校という、勉強、、行事、集団、部活、進路……と、彼女たちを方向付ける生活の場。 そんなこともうまく挿し込まれていて、彼女たちの恋が、リアル生活に直結しているものだと実感できます。 また、絵も独特です。 どちらかというと、省略型の表現方法。 細かい書き込みはなく、風景なんかはチョイチョイってな感じ。 人物だって、かなりかなり省略されてます。 そのために描かれる世界が、主人公にとって心象風景になっているという効果を上げてます。 強調するものだけが前面に出ているという表現によって、主人公たちの感情がよりわかりやすくなっているわけです。 私がこのマンガを初めて読んだのは、大学生の頃。 家庭教師をやっていた先の中学生の女の子が 「先生、すごく泣けるおもしろいマンガだから読んでみて」 と、貸してくれたのがきっかけ。 家で読んで大泣きして、妹(当時、やはり大学生)にも読ませて大泣きさせました。 そして最近、文庫本化されたので、妹が懐かしくて買ったのを借りて読みました。 いやもう、この歳になっても号泣です。 初恋の思い出は、何歳になっても美しい。 というか、年を重ねるほど美しくなる、ということですかね。 目が合うだけでときめく。 そんなたわいもない幸せ、かつてあったんだなあ。 (遠い目) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007年01月21日 16時49分34秒
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