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カテゴリ:本
「その街の今は」 著者:柴崎友香 出版社:新潮社 最近、芥川賞候補になった作品。 柴崎友香の本はこれで2冊目です。 彼女の作品の特徴かつおもしろさは詳細な日常の描写にあります。 前に読んだ「フルタイムライフ」では、新人OLの普通の会社生活が詳細に描かれてました。 たとえば、コピー取りがだんだん上手になっていく様子なんかも描かれているのだけど、これまでの小説には絶対出てこないようなくだり。 だけど、私もOL経験者ゆえ「ああ、わかるなあ」と結構ツボでした。 わざわざ言及されないようなことが言語化されるというのは、実はおもしろいことなのかもしれません。 人生は、瑣末なことの積み重ねだし。 本書では、大阪・心斎橋を舞台に28歳の主人公の生活と恋が淡々とこまごまと描かれます。 タイトルにもあるように、主人公は「その街」(心斎橋近辺)の移り変わりに興味を持っていて、昔の写真を集めては土地に流れる時間に思いを馳せます。 うーん、しかし。 舞台となる街を知らないということが、読書の上で障害になるとは。 大阪の繁華街はまったく不案内で、その街々の持つニュアンスというものがわからない。 たとえば新宿、渋谷、銀座……同じ東京の繁華街ながら、まったく違うしそれぞれの特徴があって、名前を聞くだけですぐさま様々な具体的イメージが喚起される。 大阪の街にも同じことがいえるはずだけど、私にはない。 たぶん、それがあるともっと楽しめたかな、という気がします。 (それは私の無知のせいで、作者のせいではない) 舞台となる街の風景や成り立ち、路地の息遣いを、読者も体験的実感があれば小説の大きな成功となるんだろうなあと。 ちなみに読んでいて思い描くのは、心斎橋近辺は東京で言うと日本橋から銀座のイメージ。 川を埋め立てている、というくだりがあったからかもしれないけど……。 実際はどうなんだろう? 壮大な物語ではなく詳細な描写で読ませる小説は、たぶん読者側の同じ経験から成る共感がからんでこそ、おもしろさが広がるものなのかも。 全く知らないことを詳しく説明されても、知っていることから似ていると思われるものを取り出して、そこから類推して当てはめていくしかないわけだし。 それも読書作業といえば、それまでだけど。 それから、最後。 主人公に届いたお誘いメールの返事は、結局どうなるんだ??? 「読者の想像におまかせします」 という終わり方が、いちばん困ってしまいます。 「ばーんと断りや~!」という期待(私の)が強く、行間を上手く読み込めません。 結局、行くのか行かないのか? ちょっとフラストレーション。 <おまけ> 心斎橋 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 心斎橋(しんさいばし)は、大阪府大阪市中央区にある街。 百貨店や専門店などが軒を連ねる大阪を代表する繁華街。 難波と並ぶミナミの中心であるばかりでなく、日本を代表する繁華街として西の銀座と並び称される。 狭義では大阪の中心部を南北に伸びる御堂筋の東側にある心斎橋筋の事であるが、一般的に大阪市営地下鉄の心斎橋駅を中心として御堂筋の西側まで含む。 流行発信源であるファッションの街「アメリカ村」がある事でも有名。 又、高級ブランド店やファッショナブルなカフェテリアなども集積している。 ……そうか、銀座に渋谷(または原宿)がくっついている感じ? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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