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カテゴリ:本
数字と暗号に満ちた2作品。
中山可穂 「ケッヘル」上下 (文芸春秋) この著者の作品は、女性同士の熱い恋愛が描かれることが多いのですが、本作品ではそれに加えて、親子3代の愛憎、それをとりまく濃い人間関係や連続殺人事件、ヨーロッパ各地の都市や、日本の地方都市……と盛りだくさんな内容になってます。 盛りだくさん過ぎて、最後は主題がぼやけてしまった感もありますが、あれやこれやとスリリングに楽しめました。 情熱的な登場人物(とくに主人公)が多いのも、この人の作品の特徴。 恋に落ちたら、打算も駆け引きもなく、障害があっても躊躇なくまっしぐら、そしてとことん最後まで互いを惜しみなく与え合う……、みたいな、なかなか世間一般の人(ホモだろうとヘテロだろうと)にはできないといことをやってのける姿に感嘆してします。 興味深いのは、「モーツアルティアン」と呼ばれるモーツアルトを常軌を逸したレベルまでに愛する人々の世界。 モーツアルトの全作品を通し番号で表すケッヘル番号を、世界のしくみをとく鍵と見て、すべての現象に番号をあてはめ、番号の導くままに行動していく生活なんて、(あほらしくて)真似できないけど、読んでいるうちにだんだん「そんな人生もまたよし」と思えてくるから、読書は楽しいです。 ダン・ブラウン 「ダヴィンチ・コード」 (角川書店) 大ベストセラーで映画化までされた作品を、ようやく読みました。 宗教がらみのミステリーというので、エーコの「薔薇の名前」のような難解ミステリー(完読したときには、脱力するくらいの達成感をおぼえました)を想像していたのですが、そんなことないのですね。 とても読みやすくてわかりやすい内容となっていました。 レオナルド・ダ・ヴィンチの作品の中にこめられた暗号から、キリスト教の最大秘密に迫るという触れ込みは、以前から知ってはいました。 (本が大ヒットしたころ、テレビ番組でも特番が組まれていたのは見ています) ただ秘密を暴いていくのがメインではなくて、それを前提として描かれるお宝争奪戦ゲームという構図となっていたのは、想像と違ってました。 いわば「暗号解読アドベンチャーミステリー」なんですけど、ほとんど24時間程度の時間経過の中でのお話なので、すごいテンポのよさです。 ダ・ヴィンチやニュートンが総長を務めたというシオン修道会。 その活動をめぐって起こる殺人事件、といたような虚実入り混じったフィクションは、どこまでが真実でどこからが創作なのかわからないところが、ミソ。 キリスト教世界で、この小説やそこで扱われた「秘密」がどう扱われているのか、知りたいところです。 おまけ 読んでいて不親切だなと思ったのは、ダ・ヴィンチの作品について細かく触れているくだりがあるのに、図解してくれていない点。 口絵にでも作品写真をのせてくれれば、楽しさ倍増なのに……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007年05月16日 02時19分50秒
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