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2007年06月21日
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カテゴリ:



「わたしを離さないで」
著者: カズオ・イシグロ
訳者: 土屋政雄
出版社: 早川書房


自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。
キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。
共に青春の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。
キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。
図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々がたどった数奇で皮肉な運命に…。
彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく。

英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』に比肩すると評されたイシグロ文学の最高到達点。アレックス賞受賞作。
                                          (「BOOK」データベースより)



昨年の「このミス」&「文春ミステリー」、両方のベスト10に入った作品です。
しかし、ミステリーとして読んでしまったら、この作品の味わいは浅くなるかもしれません。

おそらく、ミステリーとしての「謎」の部分は、前半にある程度察しがつきます。
だから、ミステリーとしてのサプライズだけを求めて読んでしまったら、もったいないことになります。
たぶん、それで得るものはないからです。

あまりに理不尽なまでに過酷な運命を背負わされた主人公たち。
しかし、彼らはそれに抗うこともなく、疑問に思うこともなく、それを受け入れます。
彼らが望むのは、けなげにもほんの少しの猶予期間だけ。
その従順さに、かえって読んでいるこちら側がいたたまれなくなります。
たぶん、彼らの運命はまったくのフィクションの世界だけのものではない。
もしかしたら、いずれ……。
しかし、実際には私たちも目をつぶってしまうのかもしれません。

同時に、描かれるのは主人公で語り手のキャシーと親友ルースとトミーとの関係。
閉鎖的な寮生活で繰り広げられる、同世代の少年少女たちの世界。
思春期から青年期にかけての彼らのかかわりは、どこの世にも共通な普遍的なもの。
丹念に描かれる彼らのやりとりは、リアルで身につまされるときも。
特に、キャシーとルースの関係。
女の子同士は、親友同士でもライバルであり、心を許しあいながらも微妙なかけひきがおこなわれたりするのです。
そんな部分の描写が秀逸です。

そんな、どこにでもいるような彼らが特別な運命を背負っている。
いや、逆。
特別な運命を背負っている彼らも、いたってそこらにいるような人間たちである。
どんな人間でも、与えられた人生は同じであるということ。
当たり前のことの気付かされます。

それゆえに、彼らの皮肉で過酷な行く末に、やるせなさと胸の痛みを覚えます。

全体に支配する空気は、まるで静謐。
キャシー(作者)の語り口は、いたって静かです。
何かを訴えたり、糾弾したりもしません。
最後まで抑制のきいた端正な文章のなかで、読み手が各々の指針ですくいとっていかなくてはなりません。

読後も、静かで悲しい、そして長い余韻に浸ります。






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Last updated  2007年06月22日 02時01分03秒
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