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カテゴリ:本
錏娥哢〔タ〕 「錏娥哢タ(あがるた)」 ↓ <托>という字が女偏になった漢字。ネットでは表記できません。 著者: 花村萬月 出版社: 集英社 美貌の女忍びが、島原の乱、そして徳川家康の正体に迫る。面白さ天下無双の“平成の忍者小説”決定版。(「BOOK」データベースより) 一言でまとめると上記のような内容の小説と言えます。 もうちょっと内容を補足しとくとこんな感じ。 時は徳川3代目・家光の治世。 伊賀の里に生まれた超が100個つくほどの超美少女であり優れた技を持つ忍者・錏娥哢タ(あがるた)。 このけったいな名前は、彼女個人の名前であり、伊賀の忍び一族の救世主的存在象徴する名前でもあります。 (そもそもの「アガルタ」の語源は、チベットで信じられている地下にあるという理想郷の名前らしい) その彼女が伊賀一族の存亡の鍵を握り、国の未来を担う救世主として成長していく姿が、島原の乱や徳川幕府の裏側に迫る様子とともに描かれます。 ……と書くと、すごく壮大な物語のようです。 実際にそうなんだけど、それを感じさせない小説となってます。 忍者小説というくくりは合ってます。 時代伝奇ロマン、言ってもさしつかえもない。 ついでにSFでもある。 アクション冒険小説の趣もあります。 「島原の乱」に関してはかなり詳細な記述で、りっぱな歴史小説とも言えます。 そこまではいいのです。 さらに進めると、えらくエログロだし、けっこうナンセンスコメディーでもあるし、すごいキャラ立ち小説でもあります。 つまりは、そんななんでもありが1冊に詰まった小説、となってます。 もちろんちっとも破綻してません。 シリアスとナンセンスが同居していて、緊張と弛緩が同時に襲ってくるような感じ。 そんな読書体験、なかなかできません。 たとえば、主人公・錏娥哢タが2度行う宿命の対決の場面。 互いに卓越した技と技をぶつけあい、手に汗握るアクションの連続です。 しかし、相手の極めつけの必殺技なんて、超が1000個つくほどすごくて、脱力してしまいます。 そういう落としどころが旨くて、だんだん気持ちよくなってしまいます。 ツッコミどころも満載で、作者自身も天の声としてボケとツッコミを繰り出しているあたりもツボでした。 それに、登場人物も奇人変人ばかり。 (その中では、錏娥哢タのお父さんは、けっこうまともかも) 主人公からして、けっこう淫乱で、けっこう残虐で、それでいて慈愛に満ちたキャラクターという複雑怪奇です。 とくに強烈なのは、伊賀の頭領である「蛆神様(うじがみさま)」なる性別不明の老人。 容姿性格いずれもすざましいまでの濃さに辟易します。 物語ののっけから、あまりの所業で(ここではいちいち書けないけど)、この先この本を読み進めていいのか迷ったくらいです。 で、おもしろかったのかというと、おもしろかったのです。 辟易しながらも、ほぼ一気読み。 (これは作者の筆力のたまものだと思う) 退屈するところは全くございませんでした。 ただ万人に受けるかどうかはわかりません。 ただし、こんなに波乱万丈でキャラも立っている小説だけど、映像化は無理と思われます 超がつく美貌の主人公なんて、だれができるのか思いつかないし。 そもそも、エログロ度高しで、こんなの映倫が許すのかと疑問。 それに文字で読むこのおもしろさを映像で同じように得られるかというのも、やはりはなはだ疑問です。 花村萬月の小説は、初めて読んだのですが、他の作品もこんなん? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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